6th BREAK 『大 敵−アーク・エネミー−』 第13章
2008-08-16
一ヶ月ぶりにようやく新作が出来上がりました。
良かったら読んでください。
13
笑っている、キョウシロウが笑っている。
シンイチと言う男の子供を盾に取った脅迫を聞いて大声で笑い出したのだ。
その笑いに周りにいたイスルギ兵達も呆気に取られ、銃を向けたまま固まっている。勿論それはジン達も同じだ。
「ハハハハハ・・・・・・全くよくやるもんだ。俺ならプライドが邪魔をして絶対にそんな事は出来ないな。さしずめお前達は『イスルギへの忠誠』とか大義名分をでっち上げれば何でもするような忠犬と言ったところか?
まあ、大方この手柄をきっかけに上に自分達を売り込もうって言う腹積もりなんだろう?」
「何とでも言うがいい! 我等はお前と違うんだ。親がイスルギの幹部と言うだけでのうのうとしていられる貴様のような奴には我等連邦から移籍した者のつらさはわかるまい!」
「語るに落ちるなよ、みっともないぞ?」
嘲笑うキョウシロウにシンイチが気圧されているのがジンにも見て取れた。確かにキョウシロウからは強烈な殺気が感じられる。だが、キョウシロウにこの状況を変えられる要素など一つも見当たらない。一体何があの男をあそこまで尊大にさせているのか?
「・・・・・・どの道、子供が拘束されている以上お前は手出しは出来まい。まずはお前を拘束し、彼らを再び捕らえるだけだ」
「確かに。あいつらが捕まっている限り、俺はお前達に手出しをする事が出来ない・・・・・・本当にそう思っているのか?」
ジンはキョウシロウの言葉に耳を疑った。今、奴は確かに・・・・・・
「やっぱりお前達は思考レベルも犬ころだ。滑稽なんだよ!!」
言うが早いか、キョウシロウは目の前のシンイチの顎に対して右掌底を叩き込むと、人体の構造上その一撃で激しく脳が揺さぶられたシンイチは簡単に倒れる。キョウシロウは笑みを浮かべたまま倒れたシンイチの胸部を踏みつけホルスターから抜いた銃をシンイチの目前に突きつける。だが、引き金を引く間も無く周囲の兵士が銃口をキョウシロウへと向けた。
彼らが動き出した一瞬をついてジン達はランファに導かれ、コンテナの陰へと逃げ込んだ。どうやら誰もこちらを気にしてはいない。キョウシロウをどうにかすればこちらへの対処など簡単だと踏んでいるのだろう。少々癪に障るが今はその状況に感謝するしかない。
しかし、今の状況は先程よりも予断を許さなくなった。誰かが引き金を引くだけで、キョウシロウもシンイチも確実に痛みわけ、運が悪ければ即死となるのはどれほどの愚者でも理解は出来る。それを防ぐ為の術は待つ事ただ一つ。いつかは訪れるであろう「機」をどちらかが掬い取るかが全てを決める。
だが、それはキョウシロウと言う男の本質を欠片も理解していないという事をジンは痛烈に思い知らされた。
膠着状態に入ったと理解した刹那、視界を何かがよぎりその何かはイスルギの兵士へとゆっくりと向かっていく。
それはランファだった。彼女は顔色一つ変えずに足を進める。兵士の一部が銃口を向けても歩みは止まらない。もし、自らが囮となってキョウシロウから狙いを外そうとしているのなら無謀にも程がある。キョウシロウもその事がわからないはずは無い。だが、キョウシロウの顔から、一度たりとも笑みが消えることは無かった。
「ランファ、任せる。やりたいようにやれ」
「はい、キョウシロウ様」
「キョウシロウ、貴様この状態で――――」
「黙っていろ、いい物を見せてやる」
シンイチの言葉をキョウシロウは遮った。
その時、突如ランファの様子に異変が生じる。ランファの右腕と両足が痙攣・・・・・・いや、肥大している?
「撃て・・・撃てぇ!!」
シンイチの命令に反応し、兵士の銃口がいっせいにランファに向けられ掃射された。
流れ弾に当たらぬよう銃弾の嵐が止むのを待つジンの耳にかすかに違和感が残る。
幾重にも重なる銃声の中に混ざる雑音がある。それは悲鳴だった。それも男のものの。
一体この状況で何が起こっているのか? ジンはその悲鳴に得体の知れぬもの覚え、それを確かめねばならぬと感じた。それが自分への義務であるかのように。
「ジョウスケ、何が起こっているか俺に見せてくれ。顔をコンテナの脇に出すだけでいい」
「馬鹿!! お前死ぬ気―――」
「早くしろ!!」
怒気を固めて放ったようなジンの叫びに、ジョウスケどころかカズエもマユも立ち竦んでいる。
「わかったよ・・・・・・死んでもしらねえからな!!」
ジョウスケの肩に担がれたまま、ジンはコンテナの外に顔を出す。予想通り、すでに分割された死体が数体転がっている。やはりキョウシロウが何かをしたのだろうか?
そして、その転がる死体を見てジンの脳裏に違和感と答えが瞬時に浮かぶ。充満する硝煙の臭いの中に本来あるべき血の臭い、それがここには存在していない。
決して隠せるはずも無い血の臭いがこの場に漂っていないのは死体を見れは一目瞭然だった。その場に転がるバラバラの死体の切り口から全く出血していないのだ。
「焼き切った? ヒートナイフか? それにしてはあまりにも――――」
「ヒィィィィィィィィィィィィィ!!!!」
考察の暇を突き崩すように再び悲鳴が聞こえる。ジンは反射的に悲鳴の方向へと目を向ける。
「た・・・・・・助けてくれ!! 命だけは!!」
「出来ません。あなたはキョウシロウ様に銃を突きつけたのですもの。私の刃で死ねるだけでも温情だと思ってください」
そこにいたのはランファ・・・・・・と呼ぶべきなのだろうか? ジンは目の前のモノを視界に入れて、数瞬思考が止まった。
その顔、胸、左腕はランファの持っている美しい女性の物だった。だがそれ以外は違う。
長く伸びている両足は鳥の足のような形になっており、背中部分からは大きな機械の突起が露出している。なにより、その右腕らしき部分は今のランファの身長と同程度かそれより長く伸びており、その先からはPTで使われるようなビームソードらしき物が伸びていた。
それは『異形』と言う言葉をそのまま型にしたような存在だった。ランファと言う女性の部分を残し、それぞれの部品が流麗なラインを取っていてもそれはこれ以上無いほどのグロテスクさでジンの脳裏に刻み込まれる。
「どうだ? さすがに声も出ないか会長の息子」
突然聞こえた声にジンは驚きを隠せなかった。
いつの間にかキョウシロウは自分の近くへと歩み寄っている・・・・・・。
「お前、あれは一体?」
「正当防衛さ。それにお前達に対するデモンストレーションも兼ねてはいるがな」
やはり、自分はこの男を見誤っていた。ジンはそのキョウシロウの顔から決して絶えぬ笑みを見て自分の見識の無さを強く噛み締めた。
良かったら読んでください。
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笑っている、キョウシロウが笑っている。
シンイチと言う男の子供を盾に取った脅迫を聞いて大声で笑い出したのだ。
その笑いに周りにいたイスルギ兵達も呆気に取られ、銃を向けたまま固まっている。勿論それはジン達も同じだ。
「ハハハハハ・・・・・・全くよくやるもんだ。俺ならプライドが邪魔をして絶対にそんな事は出来ないな。さしずめお前達は『イスルギへの忠誠』とか大義名分をでっち上げれば何でもするような忠犬と言ったところか?
まあ、大方この手柄をきっかけに上に自分達を売り込もうって言う腹積もりなんだろう?」
「何とでも言うがいい! 我等はお前と違うんだ。親がイスルギの幹部と言うだけでのうのうとしていられる貴様のような奴には我等連邦から移籍した者のつらさはわかるまい!」
「語るに落ちるなよ、みっともないぞ?」
嘲笑うキョウシロウにシンイチが気圧されているのがジンにも見て取れた。確かにキョウシロウからは強烈な殺気が感じられる。だが、キョウシロウにこの状況を変えられる要素など一つも見当たらない。一体何があの男をあそこまで尊大にさせているのか?
「・・・・・・どの道、子供が拘束されている以上お前は手出しは出来まい。まずはお前を拘束し、彼らを再び捕らえるだけだ」
「確かに。あいつらが捕まっている限り、俺はお前達に手出しをする事が出来ない・・・・・・本当にそう思っているのか?」
ジンはキョウシロウの言葉に耳を疑った。今、奴は確かに・・・・・・
「やっぱりお前達は思考レベルも犬ころだ。滑稽なんだよ!!」
言うが早いか、キョウシロウは目の前のシンイチの顎に対して右掌底を叩き込むと、人体の構造上その一撃で激しく脳が揺さぶられたシンイチは簡単に倒れる。キョウシロウは笑みを浮かべたまま倒れたシンイチの胸部を踏みつけホルスターから抜いた銃をシンイチの目前に突きつける。だが、引き金を引く間も無く周囲の兵士が銃口をキョウシロウへと向けた。
彼らが動き出した一瞬をついてジン達はランファに導かれ、コンテナの陰へと逃げ込んだ。どうやら誰もこちらを気にしてはいない。キョウシロウをどうにかすればこちらへの対処など簡単だと踏んでいるのだろう。少々癪に障るが今はその状況に感謝するしかない。
しかし、今の状況は先程よりも予断を許さなくなった。誰かが引き金を引くだけで、キョウシロウもシンイチも確実に痛みわけ、運が悪ければ即死となるのはどれほどの愚者でも理解は出来る。それを防ぐ為の術は待つ事ただ一つ。いつかは訪れるであろう「機」をどちらかが掬い取るかが全てを決める。
だが、それはキョウシロウと言う男の本質を欠片も理解していないという事をジンは痛烈に思い知らされた。
膠着状態に入ったと理解した刹那、視界を何かがよぎりその何かはイスルギの兵士へとゆっくりと向かっていく。
それはランファだった。彼女は顔色一つ変えずに足を進める。兵士の一部が銃口を向けても歩みは止まらない。もし、自らが囮となってキョウシロウから狙いを外そうとしているのなら無謀にも程がある。キョウシロウもその事がわからないはずは無い。だが、キョウシロウの顔から、一度たりとも笑みが消えることは無かった。
「ランファ、任せる。やりたいようにやれ」
「はい、キョウシロウ様」
「キョウシロウ、貴様この状態で――――」
「黙っていろ、いい物を見せてやる」
シンイチの言葉をキョウシロウは遮った。
その時、突如ランファの様子に異変が生じる。ランファの右腕と両足が痙攣・・・・・・いや、肥大している?
「撃て・・・撃てぇ!!」
シンイチの命令に反応し、兵士の銃口がいっせいにランファに向けられ掃射された。
流れ弾に当たらぬよう銃弾の嵐が止むのを待つジンの耳にかすかに違和感が残る。
幾重にも重なる銃声の中に混ざる雑音がある。それは悲鳴だった。それも男のものの。
一体この状況で何が起こっているのか? ジンはその悲鳴に得体の知れぬもの覚え、それを確かめねばならぬと感じた。それが自分への義務であるかのように。
「ジョウスケ、何が起こっているか俺に見せてくれ。顔をコンテナの脇に出すだけでいい」
「馬鹿!! お前死ぬ気―――」
「早くしろ!!」
怒気を固めて放ったようなジンの叫びに、ジョウスケどころかカズエもマユも立ち竦んでいる。
「わかったよ・・・・・・死んでもしらねえからな!!」
ジョウスケの肩に担がれたまま、ジンはコンテナの外に顔を出す。予想通り、すでに分割された死体が数体転がっている。やはりキョウシロウが何かをしたのだろうか?
そして、その転がる死体を見てジンの脳裏に違和感と答えが瞬時に浮かぶ。充満する硝煙の臭いの中に本来あるべき血の臭い、それがここには存在していない。
決して隠せるはずも無い血の臭いがこの場に漂っていないのは死体を見れは一目瞭然だった。その場に転がるバラバラの死体の切り口から全く出血していないのだ。
「焼き切った? ヒートナイフか? それにしてはあまりにも――――」
「ヒィィィィィィィィィィィィィ!!!!」
考察の暇を突き崩すように再び悲鳴が聞こえる。ジンは反射的に悲鳴の方向へと目を向ける。
「た・・・・・・助けてくれ!! 命だけは!!」
「出来ません。あなたはキョウシロウ様に銃を突きつけたのですもの。私の刃で死ねるだけでも温情だと思ってください」
そこにいたのはランファ・・・・・・と呼ぶべきなのだろうか? ジンは目の前のモノを視界に入れて、数瞬思考が止まった。
その顔、胸、左腕はランファの持っている美しい女性の物だった。だがそれ以外は違う。
長く伸びている両足は鳥の足のような形になっており、背中部分からは大きな機械の突起が露出している。なにより、その右腕らしき部分は今のランファの身長と同程度かそれより長く伸びており、その先からはPTで使われるようなビームソードらしき物が伸びていた。
それは『異形』と言う言葉をそのまま型にしたような存在だった。ランファと言う女性の部分を残し、それぞれの部品が流麗なラインを取っていてもそれはこれ以上無いほどのグロテスクさでジンの脳裏に刻み込まれる。
「どうだ? さすがに声も出ないか会長の息子」
突然聞こえた声にジンは驚きを隠せなかった。
いつの間にかキョウシロウは自分の近くへと歩み寄っている・・・・・・。
「お前、あれは一体?」
「正当防衛さ。それにお前達に対するデモンストレーションも兼ねてはいるがな」
やはり、自分はこの男を見誤っていた。ジンはそのキョウシロウの顔から決して絶えぬ笑みを見て自分の見識の無さを強く噛み締めた。
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