6th BREAK 『大 敵−アーク・エネミー−』 第9章
2007-12-26
お待たせしました。
OUT BRAVE更新です。
またまたスランプ状態に陥って少々アップの期間が長くなってしまいました。
今後はもう少しペースを上げられるように努力します。 9
アヤネが笑っている。そしてジンの顔もいつのまにか自分の意思とは裏腹に笑っていた。
まあ、この状況は笑うしかないだろう。己が身どころか仲間の命すら危険に晒して必死に助けに来た最愛の女が手を伸ばせば届きそうな位置に立って自分を殺そうとしている。ここまで出来の悪いブラックジョークとなると笑うしかない。
「嬉しいわジン。貴方が私の前から消えた時、もう二度と会えないと思ったんだもの。それがこうして再会できるなんて、奇跡みたいよね」
「奇跡なんて大した物じゃない。俺はお前の元に戻るつもりだった」
言葉だけなら恋愛映画の臭い台詞のやりとりだが、アヤネから伝わってくる明確な敵意が甘い囁きの真の意味を伝えてくる。
ジンは覚悟を決めて両手を上げて体勢を整えた。手を抜く事などは不可能、むしろ殺すほどの意気を持ってかからなければ殺されてしまう。アヤネの力は自分が一番理解してるのだから。
「ちょっ! 待て!!」
機先を制しようとした瞬間、血相を変えてジョウスケが自分とアヤネの間へ飛び込んできた。
「何やってんだジン!! 何で拳なんか握ってんだよ!! 助けに来たんだろ!?」
「どけジョウスケ。死ぬぞ」
「やれるもんならやってみろよ!!」
既に銃を構えているジョウスケの言葉にジンは歯軋りをする。何も知らない奴が余計な事をしているというのは本当にはらわたが煮えくり返りそうだ。
こいつにはこれ以上何を言っても無駄だろうとジンは嘆息する。馬どころか微生物に念仏を聞かせるようなものだ。ただ速やかに実力行使に出るしかない。
ジンは微かな躊躇すらせずジョウスケ目掛け左腕を振るうと、ジョウスケも以前対峙した時のように瞬時に銃口を向けてくる。予想通りだ。ジンはジョウスケの銃を掴み懐へ引き込む。
「離―――」
「頭を下げろ!!」
「!?」
ジンは叫ぶと共に体を屈めると同時にジンの頭上を何かが横切り、後方で何かが落ちる音が聞こえてくる。
それは、ついさっきジンの頬を切り裂いたモノと全く同じ物だった。ジョウスケもジンの声に咄嗟に反応したらしく、飛来した物を避ける事はできたが後ろ髪が数cm.ほど切り落とされていた。一秒どころか、0.1秒でも遅かったら確実に首を半分は切り裂かれていたであろう事は明白だ。
アヤネの笑みは未だ消えていない。まるで能面が張り付いているようにその笑みは顔に張り付いている。ジンは呆気に取られて放心しているジョウスケの手を離す。
「ジョウスケ、悪いがこれは俺とアヤネの問題だ。今みたいに巻き添えくらいたく無ければどいてろ」
「巻き添えって・・・・・・なんだよ今の!?」
「『念動力者』なんだよ、アヤネは。今はそれ以上言う暇が無い。後でなら好きなだけ聞かせてやる。だから離れていろ!!」
ジンはそう言い捨ててジョウスケを突き飛ばす。既にアヤノは再び今放った攻撃をしようとしていたからだ。ジンは躊躇する事無くアヤネとの間合いを詰める。
「悪いなアヤネ、今はお前を説得する時間も無いんだよ」
ジンの叫びと共に右の掌をアヤネの鳩尾に撃ち込んだ。衣服越しに伝わる彼女の柔らかい腹は撃ち込まれた痛みを軽減させる効果は皆無だろう。アヤネの体は痛みにも衝撃にも耐え切れずその場に崩れ落ちる。
ジンはアヤネが地面に倒れる前に彼女の首へと手を回した。アヤネを傷つける事無く意識を経つにはスリーパーホールドで落とすしかない。ジンはアヤネの細首を折らないように細心の注意をしながら腕に力を込める。
その時、ジンの鳩尾を強い衝撃が襲った。それは打撃と言うよりも自分の体内で何かが爆発したかのような激しい物だった。不意の衝撃にジンは呼吸もままならず、アヤネの首に巻きつけていた腕に力が入れる事もできずに、無意識に外してしまう。
「情け無いわねジン。まさか不意討ちに対応できなかったとでも言うの?」
アヤネは息を切らせ、ふらつきながらもジンの前に立ち尽くす。その様子からダメージからは抜けていないのは火を見るよりも明らかなはずなのだが。
「5年・・・・5年よ? 待ち続けたんだから。いつか私の前に現れる事を信じて・・・・・・いつか、貴方にこの憎悪を叩きつけて殺すんだって・・・・・・今が・・・今がその時なのよ!!」
アヤネの言葉と共に強烈な衝撃がジンの頭部へと叩きつけられる。念動力そのものを打撃のようにたたきつけているのか? その形容しがたい重々しい痛みは場所を問わずジンに襲いかかる。
「死ね・・・死ね! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
歓喜とも慟哭とも取れるような叫びを上げて、念動を叩きつけるスピードを徐々に上げていくアヤネ。だが・・・・・
「もう止めろ・・・・・」
ジンは小さく呟きながらゆっくりと立ち上がる。頭部や背中に激痛を感じるが、それを気にするわけにはいかない。降り注ぐ念動に何度も膝を折りつつもアヤネの前へと立つとジンの顔は再び笑みを浮かべた。
無論、ここでアヤネの為に命を捨てる気など毛頭無いし、アヤネを置いて逃げる気も無いのだが、拷問を受けてボロボロになった体はこれ以上自分の意思に答えられなくなってきていた。
アヤネを止めるには、もはや拳を撃つのを躊躇わずに彼女の体を大地へと平伏せなくてはいけないそれを選ぶしかない己の非力さが嘲笑となって顔に浮かんでいた。
この状況で笑みを浮かべる自分に戦慄したのか、アヤネの顔には怯えが浮かび微かの間、念動の打撃が止まる。その塵芥のような僅かな間が全てを決めた。
瞬きの時間が経つよりも早く、アヤネの顔にはジンの拳が叩きつけられていた。鼻と口から大粒の鮮血を散らしながらアヤネは背後の壁にたたき付けられ、硬質の物がぶつかる独特の鈍い音が響いた。
だが、ジンにはそれで終わらせるつもりは無かった。ジンは血と涙を混じらせても必死に立ち上がろうとするアヤネへと間合いを詰めて彼女の後頭部へ躊躇無く拳を撃ち込む。
それが。アヤネはすぐさま意識を混濁させて自らの流した血だまりへと倒れ伏せ、ジンも激痛に抗い続ける事ができず、膝をつく。
その背中には一部始終を見ていたカズエ達の視線が痛いほど突き刺さってくる。当然の事だ。彼女らには今の自分は狂人にしか思えないだろう。
血まみれのアヤネ、恐怖を纏った視線、そして激痛の走る自分の体・・・・・・全てが過去の出来事と一致し、忌まわしい記憶をフラッシュバックさせる。
それでも、今はあの時よりはマシだ。意識を失ったとはいえアヤネは自分の手元にいるのだから。
「すまないなアヤネ。もう少しだけだからな・・・・・・」
ふらつく体を酷使し、ジンはアヤネを抱え上げた。
「待たせたな、カズエさん、ジョウスケ、マユ。脱出するぜ」
「え!?」
一拍の間を置いて、ジョウスケが慌てふためく。
「ちょっと待てよジン、お前その体で・・・・・・」
「アヤネは俺の女だ・・・・・・最後まで面倒見させろ」
「でも・・・・・・」
「そんな状態で無事に脱出できると思ってるのか?」
突然、聞き覚えのある・・・・・そして、極めて耳障りな声が聞こえてきた。その声の主である男は入り口に立ち、こちらを見て笑みを浮かべている。どれほどの憎悪を抱いても抱き足りない仇敵。
ジンの憎悪は叫びとなり、その男目掛けて放たれる。
「キョウシロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!」
OUT BRAVE更新です。
またまたスランプ状態に陥って少々アップの期間が長くなってしまいました。
今後はもう少しペースを上げられるように努力します。 9
アヤネが笑っている。そしてジンの顔もいつのまにか自分の意思とは裏腹に笑っていた。
まあ、この状況は笑うしかないだろう。己が身どころか仲間の命すら危険に晒して必死に助けに来た最愛の女が手を伸ばせば届きそうな位置に立って自分を殺そうとしている。ここまで出来の悪いブラックジョークとなると笑うしかない。
「嬉しいわジン。貴方が私の前から消えた時、もう二度と会えないと思ったんだもの。それがこうして再会できるなんて、奇跡みたいよね」
「奇跡なんて大した物じゃない。俺はお前の元に戻るつもりだった」
言葉だけなら恋愛映画の臭い台詞のやりとりだが、アヤネから伝わってくる明確な敵意が甘い囁きの真の意味を伝えてくる。
ジンは覚悟を決めて両手を上げて体勢を整えた。手を抜く事などは不可能、むしろ殺すほどの意気を持ってかからなければ殺されてしまう。アヤネの力は自分が一番理解してるのだから。
「ちょっ! 待て!!」
機先を制しようとした瞬間、血相を変えてジョウスケが自分とアヤネの間へ飛び込んできた。
「何やってんだジン!! 何で拳なんか握ってんだよ!! 助けに来たんだろ!?」
「どけジョウスケ。死ぬぞ」
「やれるもんならやってみろよ!!」
既に銃を構えているジョウスケの言葉にジンは歯軋りをする。何も知らない奴が余計な事をしているというのは本当にはらわたが煮えくり返りそうだ。
こいつにはこれ以上何を言っても無駄だろうとジンは嘆息する。馬どころか微生物に念仏を聞かせるようなものだ。ただ速やかに実力行使に出るしかない。
ジンは微かな躊躇すらせずジョウスケ目掛け左腕を振るうと、ジョウスケも以前対峙した時のように瞬時に銃口を向けてくる。予想通りだ。ジンはジョウスケの銃を掴み懐へ引き込む。
「離―――」
「頭を下げろ!!」
「!?」
ジンは叫ぶと共に体を屈めると同時にジンの頭上を何かが横切り、後方で何かが落ちる音が聞こえてくる。
それは、ついさっきジンの頬を切り裂いたモノと全く同じ物だった。ジョウスケもジンの声に咄嗟に反応したらしく、飛来した物を避ける事はできたが後ろ髪が数cm.ほど切り落とされていた。一秒どころか、0.1秒でも遅かったら確実に首を半分は切り裂かれていたであろう事は明白だ。
アヤネの笑みは未だ消えていない。まるで能面が張り付いているようにその笑みは顔に張り付いている。ジンは呆気に取られて放心しているジョウスケの手を離す。
「ジョウスケ、悪いがこれは俺とアヤネの問題だ。今みたいに巻き添えくらいたく無ければどいてろ」
「巻き添えって・・・・・・なんだよ今の!?」
「『念動力者』なんだよ、アヤネは。今はそれ以上言う暇が無い。後でなら好きなだけ聞かせてやる。だから離れていろ!!」
ジンはそう言い捨ててジョウスケを突き飛ばす。既にアヤノは再び今放った攻撃をしようとしていたからだ。ジンは躊躇する事無くアヤネとの間合いを詰める。
「悪いなアヤネ、今はお前を説得する時間も無いんだよ」
ジンの叫びと共に右の掌をアヤネの鳩尾に撃ち込んだ。衣服越しに伝わる彼女の柔らかい腹は撃ち込まれた痛みを軽減させる効果は皆無だろう。アヤネの体は痛みにも衝撃にも耐え切れずその場に崩れ落ちる。
ジンはアヤネが地面に倒れる前に彼女の首へと手を回した。アヤネを傷つける事無く意識を経つにはスリーパーホールドで落とすしかない。ジンはアヤネの細首を折らないように細心の注意をしながら腕に力を込める。
その時、ジンの鳩尾を強い衝撃が襲った。それは打撃と言うよりも自分の体内で何かが爆発したかのような激しい物だった。不意の衝撃にジンは呼吸もままならず、アヤネの首に巻きつけていた腕に力が入れる事もできずに、無意識に外してしまう。
「情け無いわねジン。まさか不意討ちに対応できなかったとでも言うの?」
アヤネは息を切らせ、ふらつきながらもジンの前に立ち尽くす。その様子からダメージからは抜けていないのは火を見るよりも明らかなはずなのだが。
「5年・・・・5年よ? 待ち続けたんだから。いつか私の前に現れる事を信じて・・・・・・いつか、貴方にこの憎悪を叩きつけて殺すんだって・・・・・・今が・・・今がその時なのよ!!」
アヤネの言葉と共に強烈な衝撃がジンの頭部へと叩きつけられる。念動力そのものを打撃のようにたたきつけているのか? その形容しがたい重々しい痛みは場所を問わずジンに襲いかかる。
「死ね・・・死ね! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
歓喜とも慟哭とも取れるような叫びを上げて、念動を叩きつけるスピードを徐々に上げていくアヤネ。だが・・・・・
「もう止めろ・・・・・」
ジンは小さく呟きながらゆっくりと立ち上がる。頭部や背中に激痛を感じるが、それを気にするわけにはいかない。降り注ぐ念動に何度も膝を折りつつもアヤネの前へと立つとジンの顔は再び笑みを浮かべた。
無論、ここでアヤネの為に命を捨てる気など毛頭無いし、アヤネを置いて逃げる気も無いのだが、拷問を受けてボロボロになった体はこれ以上自分の意思に答えられなくなってきていた。
アヤネを止めるには、もはや拳を撃つのを躊躇わずに彼女の体を大地へと平伏せなくてはいけないそれを選ぶしかない己の非力さが嘲笑となって顔に浮かんでいた。
この状況で笑みを浮かべる自分に戦慄したのか、アヤネの顔には怯えが浮かび微かの間、念動の打撃が止まる。その塵芥のような僅かな間が全てを決めた。
瞬きの時間が経つよりも早く、アヤネの顔にはジンの拳が叩きつけられていた。鼻と口から大粒の鮮血を散らしながらアヤネは背後の壁にたたき付けられ、硬質の物がぶつかる独特の鈍い音が響いた。
だが、ジンにはそれで終わらせるつもりは無かった。ジンは血と涙を混じらせても必死に立ち上がろうとするアヤネへと間合いを詰めて彼女の後頭部へ躊躇無く拳を撃ち込む。
それが。アヤネはすぐさま意識を混濁させて自らの流した血だまりへと倒れ伏せ、ジンも激痛に抗い続ける事ができず、膝をつく。
その背中には一部始終を見ていたカズエ達の視線が痛いほど突き刺さってくる。当然の事だ。彼女らには今の自分は狂人にしか思えないだろう。
血まみれのアヤネ、恐怖を纏った視線、そして激痛の走る自分の体・・・・・・全てが過去の出来事と一致し、忌まわしい記憶をフラッシュバックさせる。
それでも、今はあの時よりはマシだ。意識を失ったとはいえアヤネは自分の手元にいるのだから。
「すまないなアヤネ。もう少しだけだからな・・・・・・」
ふらつく体を酷使し、ジンはアヤネを抱え上げた。
「待たせたな、カズエさん、ジョウスケ、マユ。脱出するぜ」
「え!?」
一拍の間を置いて、ジョウスケが慌てふためく。
「ちょっと待てよジン、お前その体で・・・・・・」
「アヤネは俺の女だ・・・・・・最後まで面倒見させろ」
「でも・・・・・・」
「そんな状態で無事に脱出できると思ってるのか?」
突然、聞き覚えのある・・・・・そして、極めて耳障りな声が聞こえてきた。その声の主である男は入り口に立ち、こちらを見て笑みを浮かべている。どれほどの憎悪を抱いても抱き足りない仇敵。
ジンの憎悪は叫びとなり、その男目掛けて放たれる。
「キョウシロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!」
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