6th BREAK 『大 敵−アーク・エネミー−』 第8章
2007-11-07
お待たせしました。
OUT BRAVE更新です。
今回、ようやく作品のヒロインをジンと関わらせることが出来ました。
まあ、ここからが問題かもしれませんが(笑)
8
「うわぁ・・・・・」
部屋に戻ってくるなり、ジョウスケは驚きの声を漏らす。
無理もない・・・・・・とカズエは苦笑する。なにせ、ジンの食べている食物の量が尋常では無いのだから。
風呂に入って体を洗い、長く伸びた髪を切ってから食事をしたのに、自分が冷蔵庫に保管していた食料を完全に食べつくしたのだ。
しかも、それだけでは飽き足らず、マユが持ってきた非常用の食料にまで手をつけているのだ。それでもジンは食べたりないのかコーヒー用の砂糖を大量に入れた水をがぶ飲みしている。
そういう身体にしたとはいえ、改めて見ると凄い迫力だ。見ているこちらが胸焼けを覚えるほどに・・・・・。
そんなこちらの気苦労など知ってか知らずか、砂糖水を飲み干したジンがジョウスケに目を向ける。
「どうだった? その顔からすると、それなりの収穫があったみたいだな」
「まあな。カズエさん、これ見てよ」
そう言うなり、ジョウスケは手にしていた何かをこちらに放り投げる。それは吸い込まれるように反射的に差し出した手の中に入った。それは汎用記憶メディアでほとんどの端末で見る事の出来る記憶媒体だ。
「これは?」
「お世話になった人に渡されてさ。重要な情報があるんだってさ。それでジン、アヤネちゃんって・・・」
いまいち要領を得ない返答だけして、ジョウスケはまたジンと漫才みたいな事をし始めた。だが、彼にそういうのを期待してもしょうがないのかもしれない。
とりあえず、カズエは渡された記憶メディアを部屋においてある端末に入れ、るとメディアの中には『重要事項』と書かれたフォルダが一つだけあった。
一瞬、ウィルスやワームの心配もしたが、ここにある端末はイスルギの物だから気を使う必要は無いと思いカズエはフォルダを開き、中のプログラムを確認する。
確かにこれは重要な情報だ。アヤネ・ヤシロの隔離されている部屋番号とパスコード、そして、ウァルゼリオンとヴァルレオンの格納庫への安全なルートが記載されており、更にイントラネットに繋いでおけば、リアルタイムで警備員が巡回しているルートを確認できるようになっている。これさえあれば簡単にここから脱出できるだろう。しかし、こんな物をあんなに気楽に放り投げないでほしいものだ。
だが問題はこれを信用していいのかどうかだ。もしこれら全てが誘導だった場合は全滅させられる可能性がある・・・・・。信用すべきか、無視するべきか・・・・
「考える必要ないだろ」
画面から視線を移すと、ジンが頭を掻きながらだるそうに答えた。
「罠があろうが無かろうが関係無い。どうせ行く道は一つなら無理やり押し通るだけだ」
「ま、それもそうだな。敵がいたなら倒しゃいいさ。もちろん二人は優先して守るから安心しといて」
ジンとジョウスケの極めて乱暴な意見にカズエは呆れて物が言えなくなった。だが、この二人の実力を考えれば突破できる可能性は比較的高いだろう。あとは自分とマユさえ身を守りきれれば・・・・・。
「・・・・・どうせ、言っても聞かないわよね。いいわよ、あんた達の言うとおり強行突破で行きましょう。マユちゃん、銃を一つ借りるわよ」
「え?」
返事を聞かずにカズエはマユが持ってきたウェポンケースを勝手に開けて、軽機関銃と防弾ベストを取りだす。素人の自分が戦力になるとは思わないし、わざわざ戦闘に加わるつもりも無いが自衛手段くらいは確保する必要がある。恐怖や弱さを言い訳にしていられるような状況ではないのだから。
「虎穴にいらずんば虎児を得ず。じゃあ、行きましょうか」
その言葉にジンもジョウスケもマユも静かにうなづき部屋を出た。
「・・・・・静かだな」
あの部屋を出てから、初めてジョウスケが口を開いた。確かに静かだ。静か過ぎるくらいに。
カズエとマユは軽機関銃を持ちながらも、端末で常に通路と警備員の確認をしている。どうやらジョウスケが持ってきた物は本物だったようで、未だに警備員とは出くわしていない。
正直、拍子抜けな気もするが余計な心配をする必要がなくなった分マシなのだろうと思い直す。他の3人は既にそう思っているのか、不安さの欠片も見せていない。
だが、なぜかジンは不安がぬぐえない。理由がわからないのだが得体の知れない重圧がのしかかってくるようだ。
自分がこれだけ臆病だったとは意外だった。あれだけ大見得切っておいてこれか・・・・・・ジンはそんな自分の情けなさに自嘲する。
「あ、その角を曲がった所よ。そこにいるわ」
カズエの声にジンは我に返る。そこは直線の廊下の中にある一室で別段特別な部屋には見えなかった。だが、ジンにとっては何よりも特別な場所なのだ。
ついにここまで来た。この扉を開ければアヤネがいるのだ。それなのに、自分の中で不安がさらに大きくなっている。ここまで来て何を恐れる必要があるのか、自分の事ながらも嘲笑どころか苛ついてくる。
余計な事は考えるだけ無駄。ジンは無理やりそう思い込んだ。今はアヤネを連れて、イスルギを脱出することだけを考えていればいいのだから。
「ジン、どうした?」
「別に。今後の事を考えていただけだ」
「ふーん。でも、いちゃつく時は俺らの目の届かないところでな」
ジョウスケがいやらしい笑みを浮かべながら、こっちを見る。勘違いもいいところだが、つっこむだけ疲れるので放置する事にした。そうは言っても、既にドアを開けた時に最速で射撃体勢を取れる位置を取っているのはさすがと言うべきか。
ドア自体は簡易な電子ロックな為、カズエは端末を操作してプログラムをクラッキングしてロックを解除し、マユも軽機関銃を持って、奇襲してくる敵に備えて銃を構える。ジンは自然と室内と室外の両方からの襲撃に備えながらドアを開ける役目になった。
ジョウスケと視線を交わし、一呼吸置いてジンがドアのスイッチを押すとドアは小さな音を立てて開いた。
ジンは部屋の中を一目見て強い違和感を覚えた。その部屋の中は不自然なほど生活臭がしない。テレビやソファー、絨毯やカーテン、それどころか花瓶と絵画まであるものの、そこに人間が生活しているという痕跡を欠片ほども感じ取れない。
まるで人間そのものの存在が許されないかのような部屋・・・・・・そんな中に彼女はいた。
「アヤネ・・・・・・」
窓際にあるチェアに座る女性を見てジンは小さく呟いた。それが聞こえたのかどうかはわからないが、女性はゆっくりとこちらに振り返る。
黒く長い髪は整えられておらず、服も少し汚れた病院着の様な物だが、その顔はジンの記憶の中にあるアヤネの顔と一致した。
4年・・・・いや、5年ぶりの再会にジンは何も出来なかった。言葉も思い浮かばず、体も動かず、ただ呆然と自分の愛する女の顔を見ているしか出来なかった。
だが、そうして立っていると背中を小突かれた。ジョウスケだ。
「何してるんだよ。久々の再会なんだろ? しっかり決めてこいよ」
カズエもマユも、ジョウスケの言葉にうなづいて自分を促している。ジンは、3人に押される様にゆっくりとアヤネに近づいた。
すぐそばまで歩み寄り、座っているアヤネを見つめるジン。アヤネもジンの目を見返し、少しだけ微笑んだ。
「待たせたな、アヤネ」
ジンは座ったままのアヤネに手を差し出す。アヤネもその手を掴むように細い手を伸ばした。
次の瞬間、ジンの頬のすぐそばを何かが掠めて行った。それと共に頬に鋭い痛みが走り、一文字に切り裂かれた傷口から血が垂れる。
「ジン・・・・・・待っていたわ。ずっと会いたかったのよ」
そう呟くアヤネの双眸には生気は無い。ただ強烈な敵意がその目には込められている。それを見てジンはようやく自分の中にあった不安を理解した。いや、その事にとっくに気づいていたのにも関わらず、無理やり否定しようとしていただけに過ぎなかった。
「まだ俺を殺そうとしていうのか・・・・・・アヤネ」
OUT BRAVE更新です。
今回、ようやく作品のヒロインをジンと関わらせることが出来ました。
まあ、ここからが問題かもしれませんが(笑)
8
「うわぁ・・・・・」
部屋に戻ってくるなり、ジョウスケは驚きの声を漏らす。
無理もない・・・・・・とカズエは苦笑する。なにせ、ジンの食べている食物の量が尋常では無いのだから。
風呂に入って体を洗い、長く伸びた髪を切ってから食事をしたのに、自分が冷蔵庫に保管していた食料を完全に食べつくしたのだ。
しかも、それだけでは飽き足らず、マユが持ってきた非常用の食料にまで手をつけているのだ。それでもジンは食べたりないのかコーヒー用の砂糖を大量に入れた水をがぶ飲みしている。
そういう身体にしたとはいえ、改めて見ると凄い迫力だ。見ているこちらが胸焼けを覚えるほどに・・・・・。
そんなこちらの気苦労など知ってか知らずか、砂糖水を飲み干したジンがジョウスケに目を向ける。
「どうだった? その顔からすると、それなりの収穫があったみたいだな」
「まあな。カズエさん、これ見てよ」
そう言うなり、ジョウスケは手にしていた何かをこちらに放り投げる。それは吸い込まれるように反射的に差し出した手の中に入った。それは汎用記憶メディアでほとんどの端末で見る事の出来る記憶媒体だ。
「これは?」
「お世話になった人に渡されてさ。重要な情報があるんだってさ。それでジン、アヤネちゃんって・・・」
いまいち要領を得ない返答だけして、ジョウスケはまたジンと漫才みたいな事をし始めた。だが、彼にそういうのを期待してもしょうがないのかもしれない。
とりあえず、カズエは渡された記憶メディアを部屋においてある端末に入れ、るとメディアの中には『重要事項』と書かれたフォルダが一つだけあった。
一瞬、ウィルスやワームの心配もしたが、ここにある端末はイスルギの物だから気を使う必要は無いと思いカズエはフォルダを開き、中のプログラムを確認する。
確かにこれは重要な情報だ。アヤネ・ヤシロの隔離されている部屋番号とパスコード、そして、ウァルゼリオンとヴァルレオンの格納庫への安全なルートが記載されており、更にイントラネットに繋いでおけば、リアルタイムで警備員が巡回しているルートを確認できるようになっている。これさえあれば簡単にここから脱出できるだろう。しかし、こんな物をあんなに気楽に放り投げないでほしいものだ。
だが問題はこれを信用していいのかどうかだ。もしこれら全てが誘導だった場合は全滅させられる可能性がある・・・・・。信用すべきか、無視するべきか・・・・
「考える必要ないだろ」
画面から視線を移すと、ジンが頭を掻きながらだるそうに答えた。
「罠があろうが無かろうが関係無い。どうせ行く道は一つなら無理やり押し通るだけだ」
「ま、それもそうだな。敵がいたなら倒しゃいいさ。もちろん二人は優先して守るから安心しといて」
ジンとジョウスケの極めて乱暴な意見にカズエは呆れて物が言えなくなった。だが、この二人の実力を考えれば突破できる可能性は比較的高いだろう。あとは自分とマユさえ身を守りきれれば・・・・・。
「・・・・・どうせ、言っても聞かないわよね。いいわよ、あんた達の言うとおり強行突破で行きましょう。マユちゃん、銃を一つ借りるわよ」
「え?」
返事を聞かずにカズエはマユが持ってきたウェポンケースを勝手に開けて、軽機関銃と防弾ベストを取りだす。素人の自分が戦力になるとは思わないし、わざわざ戦闘に加わるつもりも無いが自衛手段くらいは確保する必要がある。恐怖や弱さを言い訳にしていられるような状況ではないのだから。
「虎穴にいらずんば虎児を得ず。じゃあ、行きましょうか」
その言葉にジンもジョウスケもマユも静かにうなづき部屋を出た。
「・・・・・静かだな」
あの部屋を出てから、初めてジョウスケが口を開いた。確かに静かだ。静か過ぎるくらいに。
カズエとマユは軽機関銃を持ちながらも、端末で常に通路と警備員の確認をしている。どうやらジョウスケが持ってきた物は本物だったようで、未だに警備員とは出くわしていない。
正直、拍子抜けな気もするが余計な心配をする必要がなくなった分マシなのだろうと思い直す。他の3人は既にそう思っているのか、不安さの欠片も見せていない。
だが、なぜかジンは不安がぬぐえない。理由がわからないのだが得体の知れない重圧がのしかかってくるようだ。
自分がこれだけ臆病だったとは意外だった。あれだけ大見得切っておいてこれか・・・・・・ジンはそんな自分の情けなさに自嘲する。
「あ、その角を曲がった所よ。そこにいるわ」
カズエの声にジンは我に返る。そこは直線の廊下の中にある一室で別段特別な部屋には見えなかった。だが、ジンにとっては何よりも特別な場所なのだ。
ついにここまで来た。この扉を開ければアヤネがいるのだ。それなのに、自分の中で不安がさらに大きくなっている。ここまで来て何を恐れる必要があるのか、自分の事ながらも嘲笑どころか苛ついてくる。
余計な事は考えるだけ無駄。ジンは無理やりそう思い込んだ。今はアヤネを連れて、イスルギを脱出することだけを考えていればいいのだから。
「ジン、どうした?」
「別に。今後の事を考えていただけだ」
「ふーん。でも、いちゃつく時は俺らの目の届かないところでな」
ジョウスケがいやらしい笑みを浮かべながら、こっちを見る。勘違いもいいところだが、つっこむだけ疲れるので放置する事にした。そうは言っても、既にドアを開けた時に最速で射撃体勢を取れる位置を取っているのはさすがと言うべきか。
ドア自体は簡易な電子ロックな為、カズエは端末を操作してプログラムをクラッキングしてロックを解除し、マユも軽機関銃を持って、奇襲してくる敵に備えて銃を構える。ジンは自然と室内と室外の両方からの襲撃に備えながらドアを開ける役目になった。
ジョウスケと視線を交わし、一呼吸置いてジンがドアのスイッチを押すとドアは小さな音を立てて開いた。
ジンは部屋の中を一目見て強い違和感を覚えた。その部屋の中は不自然なほど生活臭がしない。テレビやソファー、絨毯やカーテン、それどころか花瓶と絵画まであるものの、そこに人間が生活しているという痕跡を欠片ほども感じ取れない。
まるで人間そのものの存在が許されないかのような部屋・・・・・・そんな中に彼女はいた。
「アヤネ・・・・・・」
窓際にあるチェアに座る女性を見てジンは小さく呟いた。それが聞こえたのかどうかはわからないが、女性はゆっくりとこちらに振り返る。
黒く長い髪は整えられておらず、服も少し汚れた病院着の様な物だが、その顔はジンの記憶の中にあるアヤネの顔と一致した。
4年・・・・いや、5年ぶりの再会にジンは何も出来なかった。言葉も思い浮かばず、体も動かず、ただ呆然と自分の愛する女の顔を見ているしか出来なかった。
だが、そうして立っていると背中を小突かれた。ジョウスケだ。
「何してるんだよ。久々の再会なんだろ? しっかり決めてこいよ」
カズエもマユも、ジョウスケの言葉にうなづいて自分を促している。ジンは、3人に押される様にゆっくりとアヤネに近づいた。
すぐそばまで歩み寄り、座っているアヤネを見つめるジン。アヤネもジンの目を見返し、少しだけ微笑んだ。
「待たせたな、アヤネ」
ジンは座ったままのアヤネに手を差し出す。アヤネもその手を掴むように細い手を伸ばした。
次の瞬間、ジンの頬のすぐそばを何かが掠めて行った。それと共に頬に鋭い痛みが走り、一文字に切り裂かれた傷口から血が垂れる。
「ジン・・・・・・待っていたわ。ずっと会いたかったのよ」
そう呟くアヤネの双眸には生気は無い。ただ強烈な敵意がその目には込められている。それを見てジンはようやく自分の中にあった不安を理解した。いや、その事にとっくに気づいていたのにも関わらず、無理やり否定しようとしていただけに過ぎなかった。
「まだ俺を殺そうとしていうのか・・・・・・アヤネ」
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