スパロボBASARA 第二話 第七章
2007-08-21
BASARAの更新です。
今回は友人の水無月しずくさんの協力をもらい、あちらが書いている「スーパーロボット大戦OG外伝・DEATH BRINGER」キャラを出しています。
もしよかったら、しずくさんのブログ『銀のしずく。』 も見てください。 七
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
タカヤは、緋炎王の暴魂を、目の前のゲシュペンストSC(ストライカー・カスタム)目がけて一文字に振るう。
だが、その一撃はゲシュペンストが間合いを広げた事によっていとも容易く回避され、逆に暴魂を振り抜いた隙を突かれ、懐に入られてしまう結果となった。暴魂という大型武器を装備し重装甲になっている緋炎王では、格闘戦用に調整されたゲシュペンストSCに間合いを詰められると対処のしようが無い。
「レナ!! 援護を!!」
「ごめんなさい!! アタシも―――」
通信の途中でレナの乗っている白冷姫の信号が途絶える。まさか、ここまで早く落ちるなんて・・・・・
「くそ、どうすれ―――」
意識を一瞬敵機から離した瞬間、強烈な振動がタカヤを襲った。とっさにカメラに目を向けると、ゲシュペンストSCの腕が緋炎王に突き入れられていた。
その一撃によるダメージは大きく、コクピット内の計器は次々とダウンしていき、緋炎皇自体も沈黙する。完膚なきまでの敗北だった。
「ミッション終了。ブラヴォーチームの勝利です」
合成音声の声がシミュレーター内に響く。これで何度目だろうか・・・・・数えるのも馬鹿らしいというのだけはわかるのだが。
悔しさと情けなさにシミュレーター内でうな垂れていると、キャノピーを叩く音がする。シミュレーション相手になってくれたブラスター小隊のリュウジ・カグラ少尉だ。
「どうした、柄にも無くしょげているのか?」
「ねーよ」
からかうようにかけるリュウジに、タカヤは拗ねる様に返事をしてシミュレーターから出る。いくら、リュウジとは戦歴が圧倒的に違うからと言って、基地に帰還してから一週間も立て続けに負けていると流石にショックも受ける。どうやら、それはレナも同じなようで休憩用のベンチで暗い顔をしてうな垂れている。
「ほ・・・ほら、レナちゃん元気出して」
「そうですよ!! これはシミュレーションなんですから・・・・・・」
自分と同じように負け続けて完全に自信を喪失したレナを、リュウジと同じブラスター小隊のハヅキ・ムラカミ曹長、ノイシュ・レーマン曹長が懸命に励ましている。もっとも、負かした当人達が言ったのでは逆効果な気がしないでもないが・・・・・・。
まあ、それは置いておいてもこの小隊には何かと世話になっている。彼らは既にカスタム機を持てるほどの腕利きなのだが自分達と同年代と言うこともあって、他の小隊のメンバーよりも綿密なやり取りをしている。今回のシミュレーションも彼らから相手役をかって出てくれたのだ。実戦経験がほぼ無いタカヤとレナには彼らの協力は感謝しても仕切れない物だ。
たった一人を除いて・・・・・・。
「よー、負け犬コンビ!! 今日も仲良く負けたのか?」
来た・・・・・。ブラスター小隊の唯一の欠点、いや極東支部の最大の問題児ゼット・グラディウスだ。その空気を読めない発言にタカヤは腹の底から深い溜め息をついた。
このゼットと言う男は究極の自己中で人を見下す悪癖がある為に能力を評価されないという自業自得男だ。しかも、大口叩く分人並み外れた実力があるので余計に性質が悪い。
「うるせえよ、ゼット。今疲れてるから相手したくねえんだ。半径1km以内によってくるな」
「あ? なんだその態度? 曹長が少尉に逆らっていいのか?」
「お前の耳も眼も節穴だな。見ろよ、俺とレナは少尉になったんだよ」
そう言ってタカヤは制服についている階級章を指で叩く。それは基地に帰還してすぐ戦時昇任の形で渡された物で、それと同時に緋炎王と白冷姫もタカヤとレナの専用機として受理された。
『世界の命運を決める者にそれなりの処置を』ともっともらしい事を言ってはいたが、上層部の本音としては、ただ単に仕官ですらない若輩者が軍を代表するような事は恥だと考えていのだろうが・・・・・。
まあ、そんな事情はゼットは理解して無いだろう。
「そんな事言おうが、お前らが下手糞なのは本当だろう? 全く、実力も無いくせに運が悪い奴らだよ。ある意味、同情するぜ」
「うるさい、馬鹿ゼット!!」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか!!」
「負け犬を負け犬って言って何が悪いんだよ!!」
ハヅキとノイシュがゼットの言動に反抗し、リュウジが呆れる。いつものブラスター小隊の光景だ。ここは自分もいつもの行動をするべきところだろう。
タカヤは、置いてあるスポーツドリンクのペットボトルを半分ほど飲んでもう一度蓋をする。そして、いつものようにゆっくりとゼットの後ろに近づき大きく振りかぶって中身の入ったペットボトルを叩きつける。
「プギッ!?」
口から妙な音を出してゼットは頭を抑えてうずくまる。前の仕事で覚えた事だが、1/3ほど中身の入ったペットボトルで思い切り殴られると人は死ぬ。それでも生きてるこの頑丈さがゼットのもっとも優秀なところかもしれない。
「キゴロ、てめえ・・・・・俺様の頭殴るの何回目だ!?」
「そんなの覚えているほど暇じゃねーし。つーか、余計な事言うから殴られるんだってパパとママに教わらなかったか?」
ゼットの殺気にタカヤも臨戦態勢をとる。やはり、初対面から五秒で顔面殴ってやった時からなんら変わらない。
「大きな口叩きやがって・・・・・大体、そんなこと言うなら一回くらい俺を落として―――」
「一回なら落ちただろ」
「うん、落ちてた」
「落ちてましたね。確か・・・・・」
ゼットの発言にリュウジが横から口を出し、それに乗じてハヅキとノイシュも口を挟む。ノイシュにいたっては几帳面に端末からデータを検索している。
「あ、ありました。えっと・・・・・・このシミュレーションはタカヤさんとレナさん対ハヅキさんとゼットさんですね」
「ちょ・・・・ちょっと待てよ!! 確かそのシミュレーション俺らが勝ってるだろうが!! ほら!!」
ゼットは端末を指差して自分達のチームが勝っている事を示すが、その場にいる全員が絶妙のコンビネーションで首を振って否定する。
「確かにお前とハヅキはタカヤ達に勝った。でも、その戦闘でお前はタカヤに落とされてるだろ」
「そうそう、アタシとのコンビネーション無視してさ。それで突っ込んで落とされて・・・・・」
リュウジとハヅキの淡々とした非難にゼットの反論しようとしているが、何を言えばいいのかわからないのか口ごもっている。
「あ、アレはたまたま・・・・・・」
「たまたま、突っ込んで白冷姫を落として、勝ち誇っているところに緋炎王の暴魂を喰らって撃墜されたんですよね」
トドメとばかりに笑顔で毒づくノイシュ。いつもゼットにいびられているからか、心なしか楽しそうだ。もっとも、当のゼットは顔を真っ赤にして激怒している。テンプレにしたいほど典型的な逆切れだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ、うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! お前ら一々うるせえんだよ!! こんな時ばっかりグダグダと!! 特にそこの『無駄に胸のでかい女』と『ショタ顔』にゃあ言われる筋合いはねえ!!」
「ん・・・んだとぉー!?」
「ゼットさん、僕怒りますよ!!」
『でかい胸』と『ショタ顔』・・・・・・ハヅキとノイシュはコンプレックスを刺激され、ゼットと乱闘を始める。これもまたブラスター小隊の日常風景だ。最初はレナも驚いて止めようとしたが、今では無理だと理解して傍観を決めている。
無論、このまま放って置くわけではない。たまにはタカヤも全員殴って無理やり止めるが、こういう時は大抵・・・・・
「いいかげんにしろ!!」
リュウジの怒声に3人の動きは止まった。いつもはリーダー格として各員の自主性を重んじるリュウジだが、いざと言う時は簡単に全員を抑えつけるリーダーシップを見せつける。あのゼットもリュウジだけには一目置いているので流石に反抗はしないほどだ。
「ゼット、お前の実力の高さは落としたタカヤもわかっている。本来なら勝てないレベルの相手だって事もな。それでも落とされたのはお前がチームバトルの本質を理解していないからだ」
ゼットは反論できないのか、眼を伏せたままリュウジの説教を聞いている。まあゼットの事だから欠点として理解しているかどうかはわからないが。
「既にPTも特機も既存の技術である現代の戦場において、どんなにパイロットの腕が高かろうが単機で勝利を得る事は無理だ。それこそあのホワイトスター以上のバケモノでもなければな。だからこそ、俺達は力を合わせ互いを守り合わねばならない。
それはお前達も同じだ、タカヤにレナ」
思いもかけないところでリュウジの矛先がこちらに向く。
「お前達の最大の欠点はチームとして成り立っていない事だ。タカヤは常に接近戦、レナは常に遠距離戦。協力もせずに自分の得意分野ばかりに気を取られ、臨機応変な判断が効かないから自分のスタイルを崩されると対処ができなくなり撃墜。そして、残った方もそのまま・・・・・この流れで負けている事は自覚しているな?」
リュウジの言葉はタカヤにとって極めて耳が痛いものだった。それはきっとレナも一緒だろう。しかし、そんな物は一朝一夕で学べる物ではないし、リュウジ達に聞いたところでどうにかできるとは思えない。タカヤの心を焦りだけが埋めていく・・・・・。
「やめとけやめとけ。キゴロ、お前が何考えているか知ったこっちゃねえが考えるだけ無駄だろ。そんな事考えるくらいだったら、何も考えないで勢いだけで戦った方がマシってもんじゃねえの? 愛しの彼女には後ろから見守ってもらいながらよ」
「なんだと?」
持っていたペットボトルを握りつぶしながらタカヤはゼットを睨む。こいつはどこまで人を愚弄すれば気が済むのだろうか? こうなったら徹底的に痛めつけて兵士として使い物にならなくしてやる。
タカヤは怒りに任せてゼットに一歩近づいた。
「やめろタカヤ、つまらない事は考えるな」
やはりというべきか、リュウジが間に入ってきた。いつもだったらここで引き下がるのだが、今は腹の虫が収まらない。
「どけよ、リュウジ。流石にもう限界だ」
「駄目だ。それに今回の発言に関してはゼットの言うとおりだからな」
「・・・・・え?」
タカヤの頭から少しの間思考が消える。リュウジが何を言っているのか理解できなかったからだ。
あの暴言の中のどこに認めるべき点があった? タカヤにはそれがわからない。わからないからこそ苛立ちが強くなる。
「意味わかんねえよ・・・・・なんで、アレが正しいって言えるんだよ!!」
「それは人から教えられる事じゃない。自分で理解しろ・・・・・・それに、そろそろミーティングの時間だからな」
「そうそう、俺もその事でリュウ達呼びに来たんだったよ。すっかり忘れてたぜ」
そう言って、リュウジとゼットはシミュレータールームから出て行った。ハヅキとノイシュも困惑しながらリュウジ達の後を追って行った。
「くそ!!」
タカヤは苛立った心を抑えられず壁を殴りつける。全てがうまく行かない、気ばかりが焦り物事が空回ってばかりいる。
「タカヤ君・・・・・」
不安に押しつぶされそうな声を出すレナを思いやる余裕は今のタカヤには無かった。口を開いたら確実にあの言葉が出るだろう。
「勝てない」という絶望と諦めにまみれた言葉を・・・・・・。
今回は友人の水無月しずくさんの協力をもらい、あちらが書いている「スーパーロボット大戦OG外伝・DEATH BRINGER」キャラを出しています。
もしよかったら、しずくさんのブログ『銀のしずく。』 も見てください。 七
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
タカヤは、緋炎王の暴魂を、目の前のゲシュペンストSC(ストライカー・カスタム)目がけて一文字に振るう。
だが、その一撃はゲシュペンストが間合いを広げた事によっていとも容易く回避され、逆に暴魂を振り抜いた隙を突かれ、懐に入られてしまう結果となった。暴魂という大型武器を装備し重装甲になっている緋炎王では、格闘戦用に調整されたゲシュペンストSCに間合いを詰められると対処のしようが無い。
「レナ!! 援護を!!」
「ごめんなさい!! アタシも―――」
通信の途中でレナの乗っている白冷姫の信号が途絶える。まさか、ここまで早く落ちるなんて・・・・・
「くそ、どうすれ―――」
意識を一瞬敵機から離した瞬間、強烈な振動がタカヤを襲った。とっさにカメラに目を向けると、ゲシュペンストSCの腕が緋炎王に突き入れられていた。
その一撃によるダメージは大きく、コクピット内の計器は次々とダウンしていき、緋炎皇自体も沈黙する。完膚なきまでの敗北だった。
「ミッション終了。ブラヴォーチームの勝利です」
合成音声の声がシミュレーター内に響く。これで何度目だろうか・・・・・数えるのも馬鹿らしいというのだけはわかるのだが。
悔しさと情けなさにシミュレーター内でうな垂れていると、キャノピーを叩く音がする。シミュレーション相手になってくれたブラスター小隊のリュウジ・カグラ少尉だ。
「どうした、柄にも無くしょげているのか?」
「ねーよ」
からかうようにかけるリュウジに、タカヤは拗ねる様に返事をしてシミュレーターから出る。いくら、リュウジとは戦歴が圧倒的に違うからと言って、基地に帰還してから一週間も立て続けに負けていると流石にショックも受ける。どうやら、それはレナも同じなようで休憩用のベンチで暗い顔をしてうな垂れている。
「ほ・・・ほら、レナちゃん元気出して」
「そうですよ!! これはシミュレーションなんですから・・・・・・」
自分と同じように負け続けて完全に自信を喪失したレナを、リュウジと同じブラスター小隊のハヅキ・ムラカミ曹長、ノイシュ・レーマン曹長が懸命に励ましている。もっとも、負かした当人達が言ったのでは逆効果な気がしないでもないが・・・・・・。
まあ、それは置いておいてもこの小隊には何かと世話になっている。彼らは既にカスタム機を持てるほどの腕利きなのだが自分達と同年代と言うこともあって、他の小隊のメンバーよりも綿密なやり取りをしている。今回のシミュレーションも彼らから相手役をかって出てくれたのだ。実戦経験がほぼ無いタカヤとレナには彼らの協力は感謝しても仕切れない物だ。
たった一人を除いて・・・・・・。
「よー、負け犬コンビ!! 今日も仲良く負けたのか?」
来た・・・・・。ブラスター小隊の唯一の欠点、いや極東支部の最大の問題児ゼット・グラディウスだ。その空気を読めない発言にタカヤは腹の底から深い溜め息をついた。
このゼットと言う男は究極の自己中で人を見下す悪癖がある為に能力を評価されないという自業自得男だ。しかも、大口叩く分人並み外れた実力があるので余計に性質が悪い。
「うるせえよ、ゼット。今疲れてるから相手したくねえんだ。半径1km以内によってくるな」
「あ? なんだその態度? 曹長が少尉に逆らっていいのか?」
「お前の耳も眼も節穴だな。見ろよ、俺とレナは少尉になったんだよ」
そう言ってタカヤは制服についている階級章を指で叩く。それは基地に帰還してすぐ戦時昇任の形で渡された物で、それと同時に緋炎王と白冷姫もタカヤとレナの専用機として受理された。
『世界の命運を決める者にそれなりの処置を』ともっともらしい事を言ってはいたが、上層部の本音としては、ただ単に仕官ですらない若輩者が軍を代表するような事は恥だと考えていのだろうが・・・・・。
まあ、そんな事情はゼットは理解して無いだろう。
「そんな事言おうが、お前らが下手糞なのは本当だろう? 全く、実力も無いくせに運が悪い奴らだよ。ある意味、同情するぜ」
「うるさい、馬鹿ゼット!!」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか!!」
「負け犬を負け犬って言って何が悪いんだよ!!」
ハヅキとノイシュがゼットの言動に反抗し、リュウジが呆れる。いつものブラスター小隊の光景だ。ここは自分もいつもの行動をするべきところだろう。
タカヤは、置いてあるスポーツドリンクのペットボトルを半分ほど飲んでもう一度蓋をする。そして、いつものようにゆっくりとゼットの後ろに近づき大きく振りかぶって中身の入ったペットボトルを叩きつける。
「プギッ!?」
口から妙な音を出してゼットは頭を抑えてうずくまる。前の仕事で覚えた事だが、1/3ほど中身の入ったペットボトルで思い切り殴られると人は死ぬ。それでも生きてるこの頑丈さがゼットのもっとも優秀なところかもしれない。
「キゴロ、てめえ・・・・・俺様の頭殴るの何回目だ!?」
「そんなの覚えているほど暇じゃねーし。つーか、余計な事言うから殴られるんだってパパとママに教わらなかったか?」
ゼットの殺気にタカヤも臨戦態勢をとる。やはり、初対面から五秒で顔面殴ってやった時からなんら変わらない。
「大きな口叩きやがって・・・・・大体、そんなこと言うなら一回くらい俺を落として―――」
「一回なら落ちただろ」
「うん、落ちてた」
「落ちてましたね。確か・・・・・」
ゼットの発言にリュウジが横から口を出し、それに乗じてハヅキとノイシュも口を挟む。ノイシュにいたっては几帳面に端末からデータを検索している。
「あ、ありました。えっと・・・・・・このシミュレーションはタカヤさんとレナさん対ハヅキさんとゼットさんですね」
「ちょ・・・・ちょっと待てよ!! 確かそのシミュレーション俺らが勝ってるだろうが!! ほら!!」
ゼットは端末を指差して自分達のチームが勝っている事を示すが、その場にいる全員が絶妙のコンビネーションで首を振って否定する。
「確かにお前とハヅキはタカヤ達に勝った。でも、その戦闘でお前はタカヤに落とされてるだろ」
「そうそう、アタシとのコンビネーション無視してさ。それで突っ込んで落とされて・・・・・」
リュウジとハヅキの淡々とした非難にゼットの反論しようとしているが、何を言えばいいのかわからないのか口ごもっている。
「あ、アレはたまたま・・・・・・」
「たまたま、突っ込んで白冷姫を落として、勝ち誇っているところに緋炎王の暴魂を喰らって撃墜されたんですよね」
トドメとばかりに笑顔で毒づくノイシュ。いつもゼットにいびられているからか、心なしか楽しそうだ。もっとも、当のゼットは顔を真っ赤にして激怒している。テンプレにしたいほど典型的な逆切れだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ、うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! お前ら一々うるせえんだよ!! こんな時ばっかりグダグダと!! 特にそこの『無駄に胸のでかい女』と『ショタ顔』にゃあ言われる筋合いはねえ!!」
「ん・・・んだとぉー!?」
「ゼットさん、僕怒りますよ!!」
『でかい胸』と『ショタ顔』・・・・・・ハヅキとノイシュはコンプレックスを刺激され、ゼットと乱闘を始める。これもまたブラスター小隊の日常風景だ。最初はレナも驚いて止めようとしたが、今では無理だと理解して傍観を決めている。
無論、このまま放って置くわけではない。たまにはタカヤも全員殴って無理やり止めるが、こういう時は大抵・・・・・
「いいかげんにしろ!!」
リュウジの怒声に3人の動きは止まった。いつもはリーダー格として各員の自主性を重んじるリュウジだが、いざと言う時は簡単に全員を抑えつけるリーダーシップを見せつける。あのゼットもリュウジだけには一目置いているので流石に反抗はしないほどだ。
「ゼット、お前の実力の高さは落としたタカヤもわかっている。本来なら勝てないレベルの相手だって事もな。それでも落とされたのはお前がチームバトルの本質を理解していないからだ」
ゼットは反論できないのか、眼を伏せたままリュウジの説教を聞いている。まあゼットの事だから欠点として理解しているかどうかはわからないが。
「既にPTも特機も既存の技術である現代の戦場において、どんなにパイロットの腕が高かろうが単機で勝利を得る事は無理だ。それこそあのホワイトスター以上のバケモノでもなければな。だからこそ、俺達は力を合わせ互いを守り合わねばならない。
それはお前達も同じだ、タカヤにレナ」
思いもかけないところでリュウジの矛先がこちらに向く。
「お前達の最大の欠点はチームとして成り立っていない事だ。タカヤは常に接近戦、レナは常に遠距離戦。協力もせずに自分の得意分野ばかりに気を取られ、臨機応変な判断が効かないから自分のスタイルを崩されると対処ができなくなり撃墜。そして、残った方もそのまま・・・・・この流れで負けている事は自覚しているな?」
リュウジの言葉はタカヤにとって極めて耳が痛いものだった。それはきっとレナも一緒だろう。しかし、そんな物は一朝一夕で学べる物ではないし、リュウジ達に聞いたところでどうにかできるとは思えない。タカヤの心を焦りだけが埋めていく・・・・・。
「やめとけやめとけ。キゴロ、お前が何考えているか知ったこっちゃねえが考えるだけ無駄だろ。そんな事考えるくらいだったら、何も考えないで勢いだけで戦った方がマシってもんじゃねえの? 愛しの彼女には後ろから見守ってもらいながらよ」
「なんだと?」
持っていたペットボトルを握りつぶしながらタカヤはゼットを睨む。こいつはどこまで人を愚弄すれば気が済むのだろうか? こうなったら徹底的に痛めつけて兵士として使い物にならなくしてやる。
タカヤは怒りに任せてゼットに一歩近づいた。
「やめろタカヤ、つまらない事は考えるな」
やはりというべきか、リュウジが間に入ってきた。いつもだったらここで引き下がるのだが、今は腹の虫が収まらない。
「どけよ、リュウジ。流石にもう限界だ」
「駄目だ。それに今回の発言に関してはゼットの言うとおりだからな」
「・・・・・え?」
タカヤの頭から少しの間思考が消える。リュウジが何を言っているのか理解できなかったからだ。
あの暴言の中のどこに認めるべき点があった? タカヤにはそれがわからない。わからないからこそ苛立ちが強くなる。
「意味わかんねえよ・・・・・なんで、アレが正しいって言えるんだよ!!」
「それは人から教えられる事じゃない。自分で理解しろ・・・・・・それに、そろそろミーティングの時間だからな」
「そうそう、俺もその事でリュウ達呼びに来たんだったよ。すっかり忘れてたぜ」
そう言って、リュウジとゼットはシミュレータールームから出て行った。ハヅキとノイシュも困惑しながらリュウジ達の後を追って行った。
「くそ!!」
タカヤは苛立った心を抑えられず壁を殴りつける。全てがうまく行かない、気ばかりが焦り物事が空回ってばかりいる。
「タカヤ君・・・・・」
不安に押しつぶされそうな声を出すレナを思いやる余裕は今のタカヤには無かった。口を開いたら確実にあの言葉が出るだろう。
「勝てない」という絶望と諦めにまみれた言葉を・・・・・・。
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