BASARA 第二話『遊戯開始』 第二章
2007-04-05
BASARAの新作です。
良かったらお読みください。 二
「お客さん、着きましたよ」
運転手の声を聞いてタカヤは目を開けた。どうやらいつの間にか寝ていたようだ。10分程度の時間で居眠りをしてしまった自分に呆れる。
「悪い悪い、これ、少ないけどおつりは良いよ」
「ありがとうございます。またご乗車ください」
運転手は笑顔と声をこわばらせて、今来た道を必死に逆走していった。
「まあ、無理もないか。こんな所に来るような客じゃあな」
苦笑しながらタカヤは顔を上げた。そこには都内には珍しい大きな門構えの屋敷があり、『神王会』の看板が堂々と掲げられている。
そう、ここは関東の極道を束ねる神王会の本部であり、その巨大な組織の会長である男の家でもある。ここに不用意に足を踏み入れれば強面の男に取り囲まれて、執拗に痛めつけられた後に東京湾に沈められる・・・・・・という噂がまかり通っている場所なのだ。
「まったく極道ってのはおっかながられるもんだな・・・・・・」
口元に笑みを浮かべながらタカヤは門をくぐる。それと共に門の中にいた男達の視線が一斉に集まってきた。視線だけではない、男達はタカヤの元へ歩み寄ってくる。その数はざっと見ただけでも数十人はくだらないだろう。
自分に対して数十人の男が睨みを効かせる中、タカヤは言う。
「ただいま」
その言葉と共に場の空気が目に見えて一変した。
「若! お勤めご苦労様でした!!」
タカヤの能天気な挨拶の後、彼らは笑顔を浮かべて頭を下げてきた。さっきまでの様子が嘘のようにみんな朗らかな顔をしている。それを見て、ようやく『自分の家』に帰ってきたのだと実感できた。まあ、彼らが『お勤め』と言うのはニュアンス的に少々違うような気もするのだが・・・・・。
そう思いながらタカヤは母屋に向かって歩き出す。既に荷物は若い衆二人が自分の部屋へと運んでいったので手ぶらになっている。
勝手知ったる我が家をタカヤは懐かしそうに見回す。連邦軍に入ってから今回が初の帰宅だ。余り時間が経っていないのだが、何もかもが懐かしいように感じる。
この廊下を構成員に追われながら走り回ったりしたし、100万以上もするツボにいたずらしたり、本物の刀を玩具だと思って振り回した事もあった・・・・・。この家には色々な思い出がいくつも詰まっている。
「こんな風に帰りたくは無かったな・・・・・」
不意に呟いた一言がタカヤ自身に重くのしかかった。本来、休暇でもないのに家に帰ってきたのも、あの一件の為なのだから。考えたくも無い事だが、自然に頭にそれが過る。
余計な事を考えているうちに、いつのまにかタカヤは会長室に着いていた。いつまでも余計な事を考えていてはいけない。タカヤは自分の顔を平手で叩いて気持ちを切り変える。
ドアを開けると、そこには会長がいた。自分には背を向けたままだが、その威風堂々とした雰囲気は以前のそれと変わらない。タカヤは正座をし、未だこちらを向かぬ会長に頭を下げる。
「鬼来天哉、ただいま会長の元へ帰りました」
すると、タカヤの後頭部に何か硬い物が当たり、乾いた音が部屋に響く。
「痛ぇ!」
不意を突かれたその行動に、タカヤは思わず素を出してしまう。顔を上げると会長が本当に楽しそうに笑っていた。
「ちょっと会長! なにをするんだよ!」
「そりゃこっちの台詞だ、馬〜鹿野郎。なにお前、『爺ちゃん』に対してかしこまってんだ?」
「良く言うぜ、「かっこいいから会長って呼べ」って言ったのは爺ちゃんじゃねえか」
「そうだっけか? もうろくしてて忘れちまったぜ」
「どこまでいっても、それだけはねえ」
「まあな。歳は食っても、この『鬼来 龍平(キゴロ リュウヘイ)』家業も女もまだまだ現役よ」
「孫の前でそういう事言うなよ」
タカヤは失笑しながらもリュウヘイの言葉を嘘とは思わなかった。部下に止められても抗争が会ったら自分から出向いて解決させるし、連邦軍に入る前に自分とほぼ歳が変わらない恋人が出来たと言っていた事もある。あらゆる意味で勢力の塊みたいな人間だ。
だが、そんなリュウヘイと話しているとなぜか安心できる。リュウヘイの懐の大きさがそうさせるのだろうか。タカヤは『あの日』以来、ようやく心の底から笑う事が出来ていた。
「さあ、可愛い孫も帰ってきた事だし宴会でも始めるか」
「え?」
突然のリュウヘイの言葉にタカヤは目を丸くする。
「爺ちゃん、今まだ昼間・・・・・と言うか朝に入るぜ? 時計見ろよ、十時になってる。おやつの時間だぜ?」
「だったら、ちょうどいいじゃねえか。それに今からだったら昼飯も兼ねられる。ブランチってやつだな」
「ツッコミどころが多すぎて、なに言っていいかわかんねえよ・・・・・・」
「まあ、細かい事を気にしてたら人生つまんねえぞ? さ、わかったら行くぜ。俺が準備させとくからお前はその服を着替えてこい」
反論する隙間も作らず、全てを勝手に決めてリュウヘイはタカヤの横を通り過ぎていった。こうなったら言われた通りにするしかない。タカヤも部屋で普段着に着替えてこようと立ち上がる。
「あ、そうだ」
その時、タカヤの背中からリュウヘイが呼びかける。
「言わなきゃいけない事もあるだろうが、まずは今を楽しむ事だな。深刻な話は後でゆっくり聞いてやるからよ」
そう言いながら、リュウヘイの声が遠ざかっていく。タカヤはあっけに取られて返事をする事も出来なかった。
いつ気がついた? それらしい話どころか素振り一つ見せていなかったのに・・・・・
「キャラ出来すぎだぜ、爺ちゃん・・・・・」
すっかり毒気を抜かれたタカヤは立ち上がり、笑いながら自分の部屋に向かっていった。
今日は暑くなる・・・・・そう思いながらレナは駅から自宅までの道を歩いていた。
自宅に帰るのは本当に久しぶりだ。最後に家族の顔を見たのは正月の頃だから、半年を超えている。しかし、レナはどうしても今回の帰宅を喜ぶ事が出来なかった。
家に帰れば家族と会わざるを得ない。そうすれば家族に「あの事」を話さなければなら無くなる。それを考えると足も気分も重くなっていく。
しかし、そんな事を考えている時間は短かった。元々、家は駅から歩いて数分と言う一等地にある一軒家だ。学生の時は便利で嬉しかった立地条件だが、今は恨めしい事この上ない。
レナは溜息をついてドアの前に立ち、チャイムに指を伸ばす・・・・・が、どうにも押す度胸が出てこない。
「うう・・・・・・」
押さなくてはいけない、それはわかっているのに身体が緊張しすぎて動かない。家族に会うだけの事で、これほどテンパっている自分にレナは泣きたくなった。
その時・・・・・・
「行ってきまーす」
「!? キャア!!」
不意に開いたドアが顔面に当たり、レナは転倒する。今度は痛みで泣きたくなってきた。だが、問題はこのドアを開けた人物の方だ・・・・・・。
「え?・・・・・・レ、レナ!?」
「ただいま・・・・・お姉ちゃん」
レナは驚いている姉の『浦生 里奈(ウラキ リナ)』にこわばった笑みを返す。
そう言えば、今日は日曜だ。姉もこの時間にいてもおかしくは無い。しかし、出来れば一番最初には会いたくなかった。
「レナ・・・・一体どうしたの? 何でこんな急に?」
「あの、あのね、えっと・・・・・」
どう説明すればわからず、レナは口ごもる。そんな時、姉の携帯が鳴り始める。
「はい、もしもし。悪いけど、今日の予定はキャンセルね。 え?何でかって? 妹が帰ってきたのよ・・・・・・なによ!! 妹の方が大切に決まってるでしょ!! 文句あるならもう会わないわ!! それじゃあ!!」
リナは一息で全てを話し終えて携帯の電源まで切った。それと共にリナは自分を引き起こし、服の汚れを手で払う。
「何で帰ってくるならあたしに連絡しないの? 基地まで迎えに行ったのに!!」
「いや、そこまでしなくてもいいよ・・・・・」
「そんな事無いわ!! 今色々と物騒なんだから・・・・・・レナが狙われたら大変でしょ?」
「そ・・・・・そうだね」
レナは苦笑しながら何とか言葉を返す。やはりリナの自分に対する過保護ぶりは変わっていなかった。可愛がられる事自体は嫌ではないのだけれど、流石にこの歳になると恥ずかしい。
「そうだ! それよりも父さんと母さんに言わなきゃね!! ほら、レナも早く入って!!」
「え? あ・・・・あぁ〜!!」
幼い頃からまったく変わらないリナの強引さに押し切られ、レナは自分の覚悟が決まる前に家族と再会する事になった・・・・・・・。
そこからは、本当にあっという間だった。あれよあれよという間に、レナは服を着替え終えてリビングに座って、父の『光一(コウイチ)』母の『佳代(カヨ)』、姉のリナの三人に囲まれていた。
「もう・・・・なんで帰るんなら電話で連絡してくれなかったの? そうしてくれたらレナちゃんの好きなシフォンケーキ作って待ってたのに・・・・・・」
「まあまあ、母さん。レナも仕事が忙しくてしょうがなかったんだよ。だからケーキは明日にして、今日のお昼はレナが「また食べたい」って言っていた、しゃぶしゃぶでも食べに行こうか」
「わあ! 良かったねレナ」
「う・・・・うん」
自分を置いてけぼりにして、どんどんと話が進んでいく・・・・・・。このままではいけない。早くあの事を言わなくては・・・・・
「ちょっと待って!!」
意を決したレナは大声を家族に向かって大声を張り上げる。父も母も姉も、突然のレナの叫びに、浮かべていた笑みが一瞬で無くなった。
一変した空気に居心地の悪さを感じながらも、それに屈さぬように家族を見つめ、言葉を続ける。
「私が帰ってきたのを喜んでくれるのは嬉しいよ。・・・・でも、その前に聞いてほしいの。本当に大事な事だから」
自分の言葉に何かを感じたからか、姉が不安を顔に浮かべてレナに問いかけてくる。
「どうしたのレナ・・・・・。レナが帰ってきたのは休暇をもらったからなんでしょう?ねえ!?」
「違うよ・・・・・・」
レナは首を振って、姉の言葉を否定する。
「私が帰ってきたのは・・・・・・・『死ぬ前に家族と会ってくる為』の特別措置だから・・・・・・」
良かったらお読みください。 二
「お客さん、着きましたよ」
運転手の声を聞いてタカヤは目を開けた。どうやらいつの間にか寝ていたようだ。10分程度の時間で居眠りをしてしまった自分に呆れる。
「悪い悪い、これ、少ないけどおつりは良いよ」
「ありがとうございます。またご乗車ください」
運転手は笑顔と声をこわばらせて、今来た道を必死に逆走していった。
「まあ、無理もないか。こんな所に来るような客じゃあな」
苦笑しながらタカヤは顔を上げた。そこには都内には珍しい大きな門構えの屋敷があり、『神王会』の看板が堂々と掲げられている。
そう、ここは関東の極道を束ねる神王会の本部であり、その巨大な組織の会長である男の家でもある。ここに不用意に足を踏み入れれば強面の男に取り囲まれて、執拗に痛めつけられた後に東京湾に沈められる・・・・・・という噂がまかり通っている場所なのだ。
「まったく極道ってのはおっかながられるもんだな・・・・・・」
口元に笑みを浮かべながらタカヤは門をくぐる。それと共に門の中にいた男達の視線が一斉に集まってきた。視線だけではない、男達はタカヤの元へ歩み寄ってくる。その数はざっと見ただけでも数十人はくだらないだろう。
自分に対して数十人の男が睨みを効かせる中、タカヤは言う。
「ただいま」
その言葉と共に場の空気が目に見えて一変した。
「若! お勤めご苦労様でした!!」
タカヤの能天気な挨拶の後、彼らは笑顔を浮かべて頭を下げてきた。さっきまでの様子が嘘のようにみんな朗らかな顔をしている。それを見て、ようやく『自分の家』に帰ってきたのだと実感できた。まあ、彼らが『お勤め』と言うのはニュアンス的に少々違うような気もするのだが・・・・・。
そう思いながらタカヤは母屋に向かって歩き出す。既に荷物は若い衆二人が自分の部屋へと運んでいったので手ぶらになっている。
勝手知ったる我が家をタカヤは懐かしそうに見回す。連邦軍に入ってから今回が初の帰宅だ。余り時間が経っていないのだが、何もかもが懐かしいように感じる。
この廊下を構成員に追われながら走り回ったりしたし、100万以上もするツボにいたずらしたり、本物の刀を玩具だと思って振り回した事もあった・・・・・。この家には色々な思い出がいくつも詰まっている。
「こんな風に帰りたくは無かったな・・・・・」
不意に呟いた一言がタカヤ自身に重くのしかかった。本来、休暇でもないのに家に帰ってきたのも、あの一件の為なのだから。考えたくも無い事だが、自然に頭にそれが過る。
余計な事を考えているうちに、いつのまにかタカヤは会長室に着いていた。いつまでも余計な事を考えていてはいけない。タカヤは自分の顔を平手で叩いて気持ちを切り変える。
ドアを開けると、そこには会長がいた。自分には背を向けたままだが、その威風堂々とした雰囲気は以前のそれと変わらない。タカヤは正座をし、未だこちらを向かぬ会長に頭を下げる。
「鬼来天哉、ただいま会長の元へ帰りました」
すると、タカヤの後頭部に何か硬い物が当たり、乾いた音が部屋に響く。
「痛ぇ!」
不意を突かれたその行動に、タカヤは思わず素を出してしまう。顔を上げると会長が本当に楽しそうに笑っていた。
「ちょっと会長! なにをするんだよ!」
「そりゃこっちの台詞だ、馬〜鹿野郎。なにお前、『爺ちゃん』に対してかしこまってんだ?」
「良く言うぜ、「かっこいいから会長って呼べ」って言ったのは爺ちゃんじゃねえか」
「そうだっけか? もうろくしてて忘れちまったぜ」
「どこまでいっても、それだけはねえ」
「まあな。歳は食っても、この『鬼来 龍平(キゴロ リュウヘイ)』家業も女もまだまだ現役よ」
「孫の前でそういう事言うなよ」
タカヤは失笑しながらもリュウヘイの言葉を嘘とは思わなかった。部下に止められても抗争が会ったら自分から出向いて解決させるし、連邦軍に入る前に自分とほぼ歳が変わらない恋人が出来たと言っていた事もある。あらゆる意味で勢力の塊みたいな人間だ。
だが、そんなリュウヘイと話しているとなぜか安心できる。リュウヘイの懐の大きさがそうさせるのだろうか。タカヤは『あの日』以来、ようやく心の底から笑う事が出来ていた。
「さあ、可愛い孫も帰ってきた事だし宴会でも始めるか」
「え?」
突然のリュウヘイの言葉にタカヤは目を丸くする。
「爺ちゃん、今まだ昼間・・・・・と言うか朝に入るぜ? 時計見ろよ、十時になってる。おやつの時間だぜ?」
「だったら、ちょうどいいじゃねえか。それに今からだったら昼飯も兼ねられる。ブランチってやつだな」
「ツッコミどころが多すぎて、なに言っていいかわかんねえよ・・・・・・」
「まあ、細かい事を気にしてたら人生つまんねえぞ? さ、わかったら行くぜ。俺が準備させとくからお前はその服を着替えてこい」
反論する隙間も作らず、全てを勝手に決めてリュウヘイはタカヤの横を通り過ぎていった。こうなったら言われた通りにするしかない。タカヤも部屋で普段着に着替えてこようと立ち上がる。
「あ、そうだ」
その時、タカヤの背中からリュウヘイが呼びかける。
「言わなきゃいけない事もあるだろうが、まずは今を楽しむ事だな。深刻な話は後でゆっくり聞いてやるからよ」
そう言いながら、リュウヘイの声が遠ざかっていく。タカヤはあっけに取られて返事をする事も出来なかった。
いつ気がついた? それらしい話どころか素振り一つ見せていなかったのに・・・・・
「キャラ出来すぎだぜ、爺ちゃん・・・・・」
すっかり毒気を抜かれたタカヤは立ち上がり、笑いながら自分の部屋に向かっていった。
今日は暑くなる・・・・・そう思いながらレナは駅から自宅までの道を歩いていた。
自宅に帰るのは本当に久しぶりだ。最後に家族の顔を見たのは正月の頃だから、半年を超えている。しかし、レナはどうしても今回の帰宅を喜ぶ事が出来なかった。
家に帰れば家族と会わざるを得ない。そうすれば家族に「あの事」を話さなければなら無くなる。それを考えると足も気分も重くなっていく。
しかし、そんな事を考えている時間は短かった。元々、家は駅から歩いて数分と言う一等地にある一軒家だ。学生の時は便利で嬉しかった立地条件だが、今は恨めしい事この上ない。
レナは溜息をついてドアの前に立ち、チャイムに指を伸ばす・・・・・が、どうにも押す度胸が出てこない。
「うう・・・・・・」
押さなくてはいけない、それはわかっているのに身体が緊張しすぎて動かない。家族に会うだけの事で、これほどテンパっている自分にレナは泣きたくなった。
その時・・・・・・
「行ってきまーす」
「!? キャア!!」
不意に開いたドアが顔面に当たり、レナは転倒する。今度は痛みで泣きたくなってきた。だが、問題はこのドアを開けた人物の方だ・・・・・・。
「え?・・・・・・レ、レナ!?」
「ただいま・・・・・お姉ちゃん」
レナは驚いている姉の『浦生 里奈(ウラキ リナ)』にこわばった笑みを返す。
そう言えば、今日は日曜だ。姉もこの時間にいてもおかしくは無い。しかし、出来れば一番最初には会いたくなかった。
「レナ・・・・一体どうしたの? 何でこんな急に?」
「あの、あのね、えっと・・・・・」
どう説明すればわからず、レナは口ごもる。そんな時、姉の携帯が鳴り始める。
「はい、もしもし。悪いけど、今日の予定はキャンセルね。 え?何でかって? 妹が帰ってきたのよ・・・・・・なによ!! 妹の方が大切に決まってるでしょ!! 文句あるならもう会わないわ!! それじゃあ!!」
リナは一息で全てを話し終えて携帯の電源まで切った。それと共にリナは自分を引き起こし、服の汚れを手で払う。
「何で帰ってくるならあたしに連絡しないの? 基地まで迎えに行ったのに!!」
「いや、そこまでしなくてもいいよ・・・・・」
「そんな事無いわ!! 今色々と物騒なんだから・・・・・・レナが狙われたら大変でしょ?」
「そ・・・・・そうだね」
レナは苦笑しながら何とか言葉を返す。やはりリナの自分に対する過保護ぶりは変わっていなかった。可愛がられる事自体は嫌ではないのだけれど、流石にこの歳になると恥ずかしい。
「そうだ! それよりも父さんと母さんに言わなきゃね!! ほら、レナも早く入って!!」
「え? あ・・・・あぁ〜!!」
幼い頃からまったく変わらないリナの強引さに押し切られ、レナは自分の覚悟が決まる前に家族と再会する事になった・・・・・・・。
そこからは、本当にあっという間だった。あれよあれよという間に、レナは服を着替え終えてリビングに座って、父の『光一(コウイチ)』母の『佳代(カヨ)』、姉のリナの三人に囲まれていた。
「もう・・・・なんで帰るんなら電話で連絡してくれなかったの? そうしてくれたらレナちゃんの好きなシフォンケーキ作って待ってたのに・・・・・・」
「まあまあ、母さん。レナも仕事が忙しくてしょうがなかったんだよ。だからケーキは明日にして、今日のお昼はレナが「また食べたい」って言っていた、しゃぶしゃぶでも食べに行こうか」
「わあ! 良かったねレナ」
「う・・・・うん」
自分を置いてけぼりにして、どんどんと話が進んでいく・・・・・・。このままではいけない。早くあの事を言わなくては・・・・・
「ちょっと待って!!」
意を決したレナは大声を家族に向かって大声を張り上げる。父も母も姉も、突然のレナの叫びに、浮かべていた笑みが一瞬で無くなった。
一変した空気に居心地の悪さを感じながらも、それに屈さぬように家族を見つめ、言葉を続ける。
「私が帰ってきたのを喜んでくれるのは嬉しいよ。・・・・でも、その前に聞いてほしいの。本当に大事な事だから」
自分の言葉に何かを感じたからか、姉が不安を顔に浮かべてレナに問いかけてくる。
「どうしたのレナ・・・・・。レナが帰ってきたのは休暇をもらったからなんでしょう?ねえ!?」
「違うよ・・・・・・」
レナは首を振って、姉の言葉を否定する。
「私が帰ってきたのは・・・・・・・『死ぬ前に家族と会ってくる為』の特別措置だから・・・・・・」
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