画像が表示されない場合の代替テキスト

 基本的に特撮・ゲーム・自作小説が中心のブログです。  小説に関しては常識ですが無断転載は禁止です。

2nd BREAK 『反逆の狼煙』

今回アップしたのも、以前うらのあさんのページ「シャイニングウィザード」にアップしていたものです。
 未熟な物なのでいつか修正しますが、その間よろしかったら読んでください。
2nd BREAK
『反逆の狼煙』

(はんぎゃくののろし)




「ジン、とりあえずあの島に着陸して」


 カズエは、ジンに眼下にある島を指定した。カズエによれば、ここまで近くだと灯台下暗しになって見つからない物だという。


とりあえずジンはカズエの指示に従って、アイドネウス島から通常飛行で一時間ほどの島にヴァルゼリオンを近づける。そして島の中央部分に着陸した。


ジンは着陸した後、身を隠すため体を低くする。それとほぼ同時にカズエが呼びかけてきた。


「無事に着陸できたわね。どうやら追って来る機体も無いみたいだし、もう感覚を元に戻しても大丈夫よ」


「戻すのはどうやるんだ?」


「簡単よ。それも『戻る』っていう思念を送るだけでいいの」


「やたら簡単だな。そんなんだったら戦闘中に間違って意識が戻る事無いのか?」


「大丈夫よ。戦闘中は、ヴァルゼリオンの中の補助コンピューターがパイロットのアドレナリンの量が一定以下にならないと意識が肉体に戻らないようになっているから」


「そうか。じゃあ、とりあえず戻ってみるか」


 ジンは心を落ち着けて意識を戻す事を念じる。すると、念じてから数秒経ったか経たないかのうちに、体中に何かを覆う感覚が蘇ってきた。


(ここは・・・コクピットか?)


 蘇った感覚にジンは、少し途惑う。ヴァルゼリオンに意識を移している間は、触覚という感覚が無くなっていたからである。


 ジンが途惑っている間に、自分を覆っていた物が外れ、自由に動けるようになっていた。「カズエさん。戻ったはいいけど、ここからどうすりゃいいんだ?」


「じゃあ、シートに座ったまま左のスイッチを押して。そうすればこっちに来れるから」


「わかった」


 ジンはカズエに言われたとおり、シートの左の肘かけにあるボタンを押した。すると、シートがエレベーターのように下降を始めた。


 シートは数秒もしないうちに下降を止めた。そこは狭い部屋で目の前にはドアがあった


ジンは、そのドアを開けて驚いた。そこにあったのは意外な広さを持つ待機スペースだった。


そのスペースは軍関係の設備のような無機質さは感じられず、まるでどこかのアパートのような感じだった。そしてその予想外の空間で、カズエはジンのいる方向に背を向け、コンピューターのディスプレイに向かっていた。


「あ、ジン。お疲れ様。とりあえずこの場所ならしばらくはゆっくりできるみたいよ」


 ジンがここに来たのに気がついたカズエはジンの方へ体を向けた。


「疲れたでしょう?そこの冷蔵庫に飲み物が入っているわよ」


 カズエが指さした場所には、確かに冷蔵庫があった。いや、冷蔵庫だけではない。よく見れば、この部屋にはテレビもあり、ロフト式ベッドもある。更にはバスとトイレも別々に設置されていた。


 ジンは冷蔵庫の中に何故かあったコーラを飲みながらカズエに疑問をぶつける。


「何だよ、ここ・・・・。本当に特機の中なのか?」


「ええ、そうよ。私がヴァルゼリオンを設計した時、必ず組み込むように言っていたサブパイロットの待機スペースよ。快適でしょ?」


「ああ。でも、特機みたいな人型マシンにこういうのをつけるなんて・・・・・・」


「そういうのを偏見って言うのよ。よく男の人は特機自体を自分のシンボルとか、なにか凄い物みたいに言うけど、結局は特機も兵器に変わりは無いわ。だから私は戦艦みたいな旧型兵器の利点を組み込んでみたのよ。まあ、その分大型化したんだけどね」


「なるほど。それなら納得がいくな。これぐらい大きい兵器だったら、こういうのを作ってもスペースに余裕があるだろうし」


「そう。基本的に特機って言う物は、殆どが小型化できるのに、必要以上に大型に作っているものがほとんどなのよ。まあ『大きければ大きい程いい』ってのは、心理学者のフロイトの説によれば男性の深層心理を表しているらしいんだけどね。でもフロイトは何でも性欲に結び付けるのよ。弟子だったユングも、フロイトのそういう所を批判していたわね。まあ、そのぶんユングの心理学は結構難解になったし。まあ、私はどっちもどっちだと思うけど・・・・・」


 カズエは、自分がずっと喋っているのを感じ取り、一度咳払いをした後、話を軌道修正しようとした。


 カズエは、説明をし始めると止まらなくなる癖があった。その癖はジンが最初のDCに入隊して、ナオトとカズエに最初に会った時以来、いくら治す様に言っても治らなかった。  


ジンは、こういう状況でも癖という物は、やはり変わらない物なのだと思い苦笑する。


「話を戻すわよ。要は、今まで特機は大型化していった割にはAMやPTとコンセプトがさほど変わらなかったのよ。確かにそれも進化と言える物なんだけど、それじゃあ、あまりにも芸が無いでしょ?だから私はパイロットを消耗品と考えて、ヴァルゼリオンや開発する予定だった他のドミネーターにここみたいなスペースを作る事を提案したのよ」


「その割には・・・・・」


「え?」


「その割には、ヴァルゼリオンの使っているシステム・・・・ドミニオン・システムは、あまりにも汎用性が無いんじゃないか?」


 ジンの言葉にカズエは沈黙した。さっきまで饒舌だったのが嘘のように感じられた。だがジンは躊躇う事無く言葉を続ける。


「どう考えてもヴァルゼリオンのドミニオン・システムと操縦システムは、噛み合っていない。もし戦闘に突入しても、機体の動きを制御しきれずに自滅するか、制御に気をとられて動けず、敵に狙い撃ちされるかのどっちかしかない」


「ええ、ジンの言うとおりよ・・・・・。今のヴァルゼリオンは普通の人間じゃ扱える物じゃない・・・・」


 カズエは、辛そうに喋る。しかし、酷かもしれないがヴァルゼリオンを操縦するジンにとって、機体の制御は死活問題なのだ。


 もし、戦闘に陥った時、ヴァルゼリオンを思うように扱えなければ、ジンもカズエも死ぬしかない。少しでも死ぬ確率を減らす為には、徹底的にヴァルゼリオンの事を知る必要があるのだ。


 だからジンはカズエにとって、きつい事を言っているのを理解しながらも言葉を続けるしかないのだ。


「だったら、なんであんなシステムにしたんだ?もっと扱いやすいシステムにすればよかったんじゃないのか?」


「確かにその通りね。でも、私達は・・・・ビアン総帥は、汎用性を追及している余裕は無かったの」


「え?」


 突然出てきたDCの創始者、ビアン・ゾルダークの名前にジンは驚いた。そして、それを見て意を決したかのように、カズエはジンに対しある話を始めた。





「ジンは、『プロジェクトDD』について殆ど知らないんでしょう?」


「ああ、知ってる事といえば、AMレベルの大きさの機体による恒星間航行を行う『プロジェクト・TD』の次の段階の計画だってことぐらいだ」


「その通りよ。じゃあ、もう一度聞くけど『プロジェクト・TD』が成功したらどうなると思う?」


「恒星間航行が簡単にできるようになって―――」


「恒星間航行ができるようになる利点は?」


 カズエの言葉にジンは考え込む。例え単機での恒星間航行ができるようになったところで、地球と友好関係になっている星など無い。それなのに単機での恒星間航行によるメリットなどほとんど無いと言っても差し支えは無いはずだ。


 そんなジンの考えを読んだのか、カズエは一言呟いた。


「もし、エアロゲイターの母星や本陣が判明したとしたら?」


「あ!!」


 カズエの言葉でようやくジンは理解した。『プロジェクト・TD』に隠された真相と『プロジェクトDD』の真実を。


「そう。単機での敵本陣への侵攻による一点破壊。それが『プロジェクトDD(支配者の降臨)』なのよ。ビアン総帥は、もし人類が敗北寸前までに陥った時に、地球そのものを囮にして発動する予定だったのよ」


「地球そのものを囮に・・・・」


 ジンは『プロジェクトDD』の真実を聞いて、驚きのあまり思わず唾を飲み込む。だが、それと同時にあのビアン総帥らしい作戦だとも思った。


 ビアンはエアロゲイターの可能性が示唆された時から、エアロゲイターとの徹底抗戦を訴え、『人類に逃げ場無し』とまで言った男だ。そんな男だからこそ、こんな一か八かの計画を考え、実行できるほどにまで計画を持っていけたのだ。


 その思想に対しては反対も多いだろうが、ジンはビアンという男そのものを改めて見直していた。


「だけど、一つだけ問題があったの。侵攻の際、生半可な能力の機体や、強力でも弾薬やエネルギーを消費する武器を持っている機体では、例え辿り付いた所でエアロゲイターの殲滅は不可能という問題がね」


「確かに単機で侵攻する以上、補給は皆無だしな」


「そう。だから私達は、必死に作り出したのよ。最小限の消耗で最大限の侵攻ができる機体・・・・それが支配者と名づけられたシステムを体内に入れた格闘および白兵戦用機体・ドミネーターなのよ」


「え?ちょっと言っている事がおかしくないか?ヴァルゼリオンの武装は弾数制だし、威力もそれほどじゃないじゃなかったのか?」


「あの武器はね」


「あの武器は?」


「ジンはヴァルゼリオンを見て、なにかちぐはぐな感じがしなかった?」


「ああ、した。どうも腕と肩の武器が機体のフォルムに合っていなかったな」


「それは当然よ。あの武装は、とりあえずつけただけだもの」


「何でそんな事を?」


「ヴァルゼリオンの本当の力を出せる人間が見つからないのよ」


「本当の力?」


「ええ。さっきも言ったとおりヴァルゼリオンのようなドミネーターと呼ばれる機体は、ドミニオン・システムを積んでいるわ。計画当初はそれを利用した高速の接近戦で、いかなる軍勢でも相手できると思われていたわ・・・・・」


 そう言ってカズエは視線を落とした。


「でも現実は、違っていた・・・・。私達は一番重大な事を忘れていたのよ」


「一番重大な事?」


「そう。結局操縦するのは人間だって事をね・・・・」


「・・・・・・」


「ドミニオン・システムは、あまりにも強力なシステムの為、思念じゃ制御しきれない・・・。けれど格闘戦を行うのに、レバーやスイッチはあまりにも向いていない、という矛盾に陥ったのよ。結局、それは解決できず、中途半端な武器をつけるだけで終わってしまったの」


「そうか・・・・・」


「結局、『プロジェクトDD』は、発動する事も無かったけど、いつまたエアロゲイターが来るのかはわからない・・・・。だからビアン総帥の死後も研究を続けてたんだけど・・・・・結局は無駄になったわ・・・・・・」


 ジンは何も言えなかった。確かにカズエの理想どおりの性能を発揮できたら、ヴァルゼリオンは、無敵になるだろう。大気圏脱出速度をほぼ瞬時に出し、相手が気づく間も無く接近戦で敵機を破壊できる機体に敵う物など現時点では皆無だからだ。そして同じように、そんな機体を制御できる人間も皆無だった。


 だが・・・・


「なあ、カズエさん。ヴァルゼリオンを制御できるようになるには、どうすればいい?」


「え?」


「俺は、カズエさんの話を聞いてて、ヴァルゼリオンを自在に操れるようになりたくなった。こんな機体にめぐり合うなんて二度とないだろうからな」


「今は冗談を聞いても笑える気分じゃないわ」


「冗談を言っているつもりは無いけどな」


「・・・・・・・本気なの?」


「ああ、本気だ」


 ジンは、決意を込めた目でカズエを見据える。だがカズエは、ジンから視線を外し、呟いた。


「無理よ・・・・。いくらジンが格闘戦が強いからと言って、ヴァルゼリオンを操れるようにはならないわ」


「言ってくれるな。まあ、あんな動きしかできなかったんじゃ当たり前か」


「そうじゃないの。ヴァルゼリオンを完全に操るには、特殊な能力が必要なのよ『PSF』と言う物が・・・」


「PSF?」


「ええ。正式名称は『Pluralistic intelligence Simultaneously disposal Faculty』。PSFは、言いやすいように頭文字をとったものよ。日本語に訳すなら『多源情報 同時処理 能力』になるわ」


「もっともらしい名前だってのはわかった。で、それは一体どんな能力なんだ?」


「名前の通りよ。根源の異なる情報全てを同時に、そして正確に脳内で処理できる能力の事なの。わかりやすく説明するならパソコンで、同時にいくつかのプログラムを開きながら処理速度を全く落とす事無く動かす事ができると言う事に等しいわ」


「なるほどな・・・・」


「ジンは一度動かしたからもうわかっているでしょ?ヴァルゼリオンは意識だけで機体を動かしながらも、同時にドミニオン・システムの制御まで行わなければならないの。


しかもそれをコンマ一秒以下で生死が決まる戦場で行わなければならないのよ。そんな事ができる!?できるはずが無いわ!歴史に出てきた聖徳太子じゃあるまいし・・・・」


「できるさ」


「え?」


「できない事は無い。要は慣れる事だ」


「貴方、ちゃんと話を聞いてたの?ヴァルゼリオンの操縦システムは人間には――」


「聖徳太子は人間だぜ?しかも実在の人間だ」


「でも――」


「これを見てくれよ」


 ジンは、カズエが喋るのを遮り、ポケットに入れていたバッジを見せた。


「何よ、これ」


「直人さんを殺した奴がつけていたバッジだよ」


 ジンの言葉にカズエはバッジに目を落とす。するとカズエの顔色が瞬く間に青くなって言った。そこにははっきりと日本語で『イスルギ』と書かれていた。


「ここに書いてあるイスルギ・・・・って」


「そう。世界?2の機動兵器開発会社『イスルギ重工』。俺の実家だ」


「なんでイスルギが・・・」


「どんな理由があるかはわからない。けれど奴らがやっている事が・・・ナオトを殺した奴らが正しいはずが無い!!」


 ジンは呆然としたままのカズエに力強く語りかける。その時ジンの手は血が滲まんばかりに力強く手を握り締めた。


「カズエさん・・・。今の俺達は、イスルギに追われる身で、あまりに非力だ。普通に戦った所で、絶対に勝ち目は無い。この状況を覆す事ができるのはあんたが作ったこのヴァルゼリオンしかない!他のAMやPTじゃ駄目なんだ!!」


「ジン・・・・・あなた本気で――」


 その時、カズエの言葉を遮るかのように警報音が鳴った。その警報音に反応して、カズエはさっきまで向かっていたコンピューターを操作し始めた。


「まさか・・・・そんな・・・・」


 ディスプレイに向かっていたカズエは、画面を見て肩を落とした。


「どうしたんだカズエさん?」


「囲まれたわ・・・・」


「囲まれた?」


「そう。リオンが十五体とガーリオンが一体の小隊・・・・・。予想より多い機体数だわ」


「だけど、それぐらいなら―――」


「無理よ・・・・。今ヴァルゼリオンに積まれている弾薬は、全部合わせても半分も撃墜できない量しかないわ」


「マジかよ・・・・」


「ここは、前の時みたいに一気にスピードを出して逃げ切った方がよさそうね」


「いや・・・戦う」


「戦うって・・・・。言ったでしょ!?弾薬は、襲って来た部隊を半分も撃墜できないって!!」


「弾薬だけには頼らないさ」


「もしかして・・・・冗談でしょ!?」


「冗談じゃない・・・・。奴等を格闘戦で落としてやる!!」




「本気なの?ジン・・・・」


「ああ、本気だ。何度も言わせないでくれ」


 ジンは、何度も同じ事を言うカズエに少々苛立つ。既にジンは、リオン十体とガーリオン一体の小隊と戦うためにヴァルゼリオンのコクピットに待機していて、いつでも意識をヴァルゼリオンに転送できる状態になっていた。


ジンがまだ転送しない理由は一つ。カズエの強固な反対だった。


「さっきから言っている通り、俺は奴らと戦う。絶対に逃げるなんて事はしない」


「でも・・・。いくら覚悟を決めたって、いきなり戦えるわけじゃないわ。ジンもDCにいたならそんな事ぐらい理解できてるでしょ?」


「ああ。でもな、今の俺達に準備をしてからなんて、悠長な事は言えない筈だろ?」


 ジンの言葉にカズエは沈黙した。当たり前である。カズエはジンの言葉に同意するしかない。ヴァルゼリオンの操作は、慣れや準備などが全く無意味なのだから。


「わかったか?いくら逃げても、結局は勝てずに死ぬだけだ。だったら少しでも勝つ可能性にかけるべきだろ?」


「確かにね・・・・わかったわジン」


「わかってくれたみたいだな」


「ええ。でもいきなり突っ込むような真似は止めなさいよ」


「了解。・・・・じゃあいくぜ!!」


 ジンはカズエへの返事とほぼ同時に、シートの右側にあるボタンを押し、意識をヴァルゼリオンへと転送を開始する。ボタンを押した瞬間、前と同じようにジンの目の前は一度暗くなり、すぐに視界がヴァルゼリオンのものへと変わった。


 意識の転送は思ったよりもスムーズに終わった。最初に行った時のような頭痛も吐き気も無く、すぐにでも戦えるほど好調だった。


「大丈夫?意識転送は終わった?」


 再びカズエの声が体の中から響いてくる。それを聞くと、ジンは再び自分がヴァルゼリオンになったのだと実感した。


「大丈夫だ。むしろ最初の時よりも簡単に意識が転送できた。これは一体どんな訳だ?」


「ちょっと良く分からないわね・・・・。何しろまだ転送した人間はジンだけだもの・・・・」


「そうか・・・。ならいいさ、些細な事だ。それよりもあとは奴らと戦うだけだ」


「そうね・・・・。死なないでよジン」


「ああ。それもわかってる!!」


 ジンは返事をすると同時に肩に付いているツイン・レールキャノンを上空にいるリオン達の部隊に撃った。だが放たれた弾丸は、散開しているリオンの一体を掠めただけだった。それを見てジンは舌打ちをする。


「くそっ・・・。照準が無いんじゃ肩にある武器じゃ狙いがつけられねえ!本当に射撃兵器には向いてない機体だ!」


「仕方ないでしょ?これは本来なら接近戦用の機体なんだから!」


「それもそうだな。だったらとりあえず当る事を願って撃つだけだ!」


 ジンは、狙いの定まらない肩のツイン・レールキャノンを動くリオン目がけ、当るを幸いとばかりに撃ちまくる。幸運にも放った弾丸の一発がリオンの胴体に命中し、一体を撃墜できた。


「よし・・・。二機目を!」


 一体を撃墜できたのに気をよくし、ジンは別な機体目がけツイン・レールキャノンを撃つ。だが、砲身からは弾丸は出なかった。


「なにっ!?もう弾丸切れかよ!!」


「だからさっきから言っていたじゃない!!弾丸はかなり少ないって!!もう残弾はアーム・レールガンの弾丸が20発ぐらいよ。それが過ぎたら格闘戦を挑むしかなくなるわ」


「まったく・・・。こんな機体でエアロゲイターの本陣を単機で叩こうなんて冗談にもほどがあるぜ・・・」


「ここまで人を選ぶような機体になるとは思わなかったのよ。エアロゲイターの軍団と戦うためだけの為にひたすら強力な機体を作ろうとしていたから・・・・」


「じゃあ、それが証明できるよう努力してみるさ!!」


 そう言ってジンは空中で散開しているリオンの部隊目がけ飛び上がった。


(まずはスピードの調整だ。あの時の十分の一ほど出せば・・・・・)


 ジンは、思念だけで必死にヴァルゼリオンの速度を調整しようとする。何とか調整が上手くいったのか、ヴァルゼリオンはジンの念じたとおりのスピードでリオン部隊の目前に現れた。


(よし、いける!)


 ジンはヴァルゼリオンを敵小隊の真ん中に静止させ、腕に付いているアーム・レールキャノンの銃口を向ける。


「喰らえ!!」


 ジンは、その場で低速で回転して、銃口から全弾を放出する。敵小隊は不意を突かれたらしく、いきなりの発砲に対処できなかった。


 発砲から数秒後、ついにアーム・レールキャノンの弾丸も尽きた。ジンは何体のリオンが落ちたかを見る為に回転を止めた。


「なに?」


ジンの『何機かは落とせる』という予想は外れていた。確かに弾丸は当っていたものの殆どがリオンの四肢に当り、その為敵小隊は四肢にある程度の損傷はあるものの、機体そのものに対してのダメージはほとんど無いと言っても過言とは言えない状態だった。


「まずった・・・」


 ジンの呟きとほぼ同時に敵小隊はヴァルゼリオンにレールガンを向けてきた。


「くそっ!避け――」


 敵小隊が向けたレールガンに反応したその瞬間、ジンは最初に乗った時の上手くヴァルゼリオンを操れず、大気圏を出てしまいそうだった事が頭に浮かんだ。


(またあんなスピードが出るかもしれない)


 そのジンの一瞬の気の迷いによる回避動作の遅れを、敵のパイロット達は見逃さなかった。敵小隊は、動きが遅れたヴァルゼリオンに向け、一斉にレールガンを撃った。レールガンから放たれた弾丸はジンが撃ったときとは違い、確実にヴァルゼリオンの胴体部分に集まっていた。


「ぐっ!くそ!!」


 ジンはレールガンの弾丸を腕でガードしながらなんとかかわし、敵小隊から距離をとった。だがリオン達もすぐさまヴァルゼリオンに対して距離を詰めてきた。


(肩のやつも腕のやつも弾丸切れだ・・・・。あとは格闘戦に持ち込むしかない)


 ジンは、覚悟を決め、構えをとる。すると、体の中からカズエの声が聞こえてくる。


「ジン!大丈夫なの?」


「痛みもないし快調だ。これが生身なら50人ぐらいに囲まれても負ける気はしない」


「痛みが無いのは当たり前よ。ヴァルゼリオンの機体と貴方の体は完全に同調しているわけじゃないんだから。それよりも本当に格闘戦に持ち込む気なの?」


「ああ。このまま逃げるわけには行かないからな。ここで逃げたら一生イスルギに怯えて暮らすしかなくなる・・・・」


「確かにね・・・・。でもヴァルゼリオンの開発者として言わせてもらうなら逃げた方がいいわ」


「何でだよ!!」


「多分人間にはヴァルゼリオンの――」


「御託はいい!あとはこっちで何とかする!!」


「ちょっとジン!!」


 ジンは、カズエのアドバイスを無視し、一番先頭のリオンに狙いをつける。


(とりあえずアレを蹴り飛ばす。そして接近戦に持ち込む!)


 ジンは狙いを付けた先頭のリオン目がけて間合いを詰め、渾身の右回し蹴りを放った。だが・・・・


「えっ!?」


 その瞬間ジンは驚愕した。ヴァルゼリオンが放った回し蹴りは、確実にリオンの胴体に狙いをつけていた。それにも関わらず、ヴァルゼリオンはリオンの部隊の後方で何も無い所に回し蹴りを撃っていたのだ。


「な・・・なんだ?どういうことだ!?」


 ジンは予想外の出来事に困惑する。それは敵も同じらしく、突然後方に現れたヴァルゼリオンに部隊は混乱していた。


 だが、この小隊の指揮官は有能だった。指揮官用のガーリオンが指示をしているかのような動きを見せると、すぐさまヴァルゼリオンに向かってレールガンを撃ってきた。


「ちっ!」


 ジンは、弾丸を避けようと咄嗟に下に動く。だがそれによってヴァルゼリオンは突然何かに激突し、機体を大きく揺らす。痛みは無いものの、ジンの体を衝撃が襲った。


「ガハッ!!」


 ヴァルゼリオンが激突したのは海だった。ジンの咄嗟に出た思念の為、マッハ以上の速度で機体が動き、それを認識する前に海面に激突してしまったのだった。


「ジン!!ジン!?大丈夫なの!?」


「く・・・・くそっ!!」


 ジンにはカズエの心配の声が届かなかった。ジンはすぐに態勢を立て直し、海から飛び出し、敵小隊に再び襲いかかる。だがヴァルゼリオンは、ジンの意図した動きが全く出来なかった。


 いくら一体のリオンに狙いを定めてもことごとく拳も蹴りも空を切るだけで、撃墜どころか攻撃を当てる事もできずにいた。


「ちくしょう!なんでだ!?」


 ジンは叫びながらひたすら拳と蹴りを撃つが、やはりリオンには当てる事ができず半ばパニックを起こしていた。


「くそぅ!くそぅ!!」


 全く攻撃が当らず一人で動き回るヴァルゼリオンの動きは、もはや滑稽と言っても差し支えは無かった。敵小隊はもはや避けようともせず、ヴァルゼリオンを嘲笑うようにレールガンを撃ってきた。


「くっ!なめんじゃねえ!!」


 ジンは、激怒しながら敵小隊に殴りかかる。だがやはり、リオンの部隊に拳は当らず、そのうえ直線状にあった島の内陸部に激突してしまった。


「ウガッ!!」


 ヴァルゼリオンを通して、ジンの体を海に叩きつけられた衝撃が襲う。その衝撃は、ジンの脳にまで達し、ジンの意識を奪い去って行く。


「な・・・なんでだ・・・。なんで当らないんだよ・・・・」


 ジンは、搾り出すように発した疑問の言葉を残し、意識が薄れていった。


「やっぱり・・・・」


 カーゴ・ルームにいたカズエは、ジンの最後の呟きを聞いて顔を曇らせながら誰ともなく呟いた。


「ヴァルゼリオンの制御は、人間の脳でできる制御レベルを超える・・・・。その為に操縦者は全ての操作を順番にではなく同時に行わなければならない・・・・。そんな事が人間にできるはずが無い・・・・」


 そう言いながらカズエは、手に血が滲むほど強く握りながら再び呟く。


「何が支配者よ・・・・・。何が人類の最後の切り札よ・・・・・。ただ単に制御不能なガラクタを作っただけじゃない・・・・」


 カズエは、自分の開発者としての未熟さと、何も解決できない情けなさを悔いて泣いた。だが、その涙も声もジンの耳には届かなかった・・・・・。


 なぜなら今ジンの中で、『何か』が急激な変化を起こしていた・・・・。





 目の前に映る物が何かわからなかった。耳に入ってくる物も何かわからなかった。意識はあるにも関わらず、それはまるで切れかけた明かりのように虚ろだった。


だが、それでもジンは生きていた。自我意識が虚ろになりながらも、ジンは地面に倒れているヴァルゼリオンの体を起こす。本能的に倒れている状態が危険なことを察知し、あらゆる事態に対応する為に立ち上がったのだ。そうとも知らずにカズエはジンが無事だったと思い、ジンに声をかけてきた。


「ジン!大丈夫だったの?」


カズエの声にジンは反応しない。ジンはいまだ消えかけている意識の中にいてヴァルゼリオンで戦いを挑む事ができる状態には程遠かった。


しかし、それは敵にとっては好都合だった。敵小隊は、ヴァルゼリオンが立ち上がった事に驚きフォーメーションを崩した物の、すぐさま建て直しただ立っているヴァルゼリオンに向かってきた。


「ジン!逃げて!!やっぱりヴァルゼリオンで戦うなんて無理だったのよ!!」


 カズエは必死にジンに対して呼びかけるが今のジンには襲ってくるリオンも見えていなければ、カズエの必死の声も聞こえていない。


 ただ、なんとなく何かが自分に向かってくることだけは感じ取る事ができた。


(避けないと・・・・)


 何故か知らないが、ジンは襲ってくるリオンのレールガンを無意識的に避けた。それはリオンが何発レールガンを撃っても変わらず、弾丸はさっきまでのようにヴァルゼリオンのボディを掠める事は無かった。


 敵小隊はいつのまにか弾丸を切らし、マガジンを変える為に動きを止める。それを見たカズエはジンにさっきより強く呼びかける。


「今のうちよジン!!相手は今武器がつかえないわ!今のうちに逃げましょう!!」


 さっきより強いカズエの声がジンに呼びかける。だがやはりジンは反応をせず、ヴァルゼリオンをただ立たせたままだった。


 その間にも敵小隊はマガジンを入れ替え、隊の半分のリオンがジンに接近しながらレールガンを撃ってきた。


「ジン!逃げてジン!!」


 カズエは必死に叫んだ。いくらヴァルゼリオンと言っても、リオン数機のレールガンの集中砲火を喰らって無事でいられるほど装甲は現実離れしていないのだ。


 そして着弾の瞬間、突如ジンは動き出した。一瞬サイドステップをして弾丸を避け、降下してくるリオン目がけ一気に襲いかかる。しかしリオンはジンの攻撃が当らない事をさっきまでの攻撃で理解していた。敵小隊は、余裕を持って向かってくるヴァルゼリオンに照準を合わせようとした。


 だが、その対処行動はあまりにも遅かった。リオンがヴァルゼリオンの襲撃を確認した瞬間、既にヴァルゼリオンは一体のリオンへ接近していた。そしてリオンが自分へ向く前に、ヴァルゼリオンの左足がリオンの胴体に撃ち込まれていた。


 だがそれを他のリオンが認識する事はできなかった。ヴァルゼリオンが一機のリオンを落としたとほぼ同時に、ヴァルゼリオンは、真後ろにいたリオン2体の頭を右腕の裏拳で吹き飛ばし、更に間髪いれず、横にいたリオン4体を右後ろ回し蹴りで両断した。それはわずか一秒の出来事だった。


「な・・・何したのジン・・・・」


 カズエは突然のヴァルゼリオンの動きに驚いていた。それは敵小隊も同じで、ヴァルゼリオンの見せた閃光の如き動きに浮き足立っていた。


「ねえ、ちょっと!聞いているのジン!?」


「え・・・・・?」


 ようやくジンは意識を取り戻し始めた。目の前を覆う輪郭のハッキリしない光景が、まるで靄が晴れるかのように、ジンの視界は徐々に輪郭を取り戻していった。


「俺は・・・・あれ?」


 ジンは落ちていくリオンの残骸を見て、何が起こったかを少しずつ理解し始めた。


「ジン、今のどうやったの?さっきまでの動きとまるで違ってたじゃない!?」


「いや、覚えてない・・・・・・」


「え?」


「今まで気を失ってた・・・・。だから何をどうしたのかがわからないんだ」


「ちょっと・・・・冗談言ってる場合じゃないのよ!?」


「冗談じゃない・・・・。本当なんだよ・・・・・」


 ジンの言葉に、カズエの返事は無かった。あきれたのか、もう諦めたのかはわからないがその反応は間違ってはいない。


 だがジンには心に何かが引っかかっていた。さっきまで意識を失っていた時に何があったのかはよく覚えていないものの、体中に何か妙な感覚が残っていた。


 だがジンにそれを確かめる余裕は無かった。隊の半分を落とされた敵小隊は、今度こそトドメを刺そうと思ったのか、ジン目がけて全機が突撃してきた。敵小隊は今撃墜された者の轍は踏むまいと、完璧なフォーメーションでジンに襲いかかってくる。


 しかしジンは微動だにしなかった。それは意識を失ったからでも、諦めたからでもない。ジンはうっすらと体が記憶しているさっきのヴァルゼリオンが行った動きを思い返していた。


(ぼんやりと記憶しているあの動き・・・・・・。思い出せ・・・思い出せ!!)


 仁王立ちで空中に立ち尽くすヴァルゼリオン、それに目がけ銃を撃ちながら空中から襲いかかる7体のリオンと1体のガーリオン。撃たれた銃弾はヴァルゼリオンの体を何度も掠め、装甲を削って行く。


 そして、ついに司令官機のガーリオンが突撃攻撃『ソニックブレイカー』を使用した。ソニックブレイカーの直撃を食らえばヴァルゼリオンでも無事ではすまない。


 ソニックブレイカーを使用したガーリオンは加速し、前衛のリオンを追い越し、ヴァルゼリオンの鼻先まで迫っていた。


 だがその時、突然ジンの視界と感覚に異変が起きた。突然世界の輪郭は崩れ、それと共に体中の感覚が鋭敏になり、自分を覆う全ての状況が即座に頭の中に入ってきた。


(キタッ!!)


 その瞬間、ヴァルゼリオンの姿がガーリオンの視界から消え去り、それとほぼ同時に最も後方にいたリオンの後ろに現れていた。


 それはその場にいた全ての者が理解できない現実だった。既に接触まで数mを切っていた文字通り音速のスピードを出すソニックブレイカーを無効化したうえ、既に最も後方にいたリオンの背後へと立っていたのだから。


ジンは、驚愕して固まっている敵小隊にかまわず、自分の・・・・つまりヴァルゼリオンの上腕部に手を伸ばした。


「フンッ!!」


 ジンは気合と共に、ヴァルゼリオンの上腕部につけられていたアーム・レールガンの砲身を引き剥がし、海に投げ捨てる。更にそのまま背中に手を回し、ツイン・レールキャノンの砲身を掴む。


「ウラァッ!!」


 再び気合を入れるとツイン・レールキャノンをも引き剥がし、海に投げ捨てた。それによって、ついにヴァルゼリオンは本当の姿になった。余計な武装をつける事無く、その身一つでエアロゲイターと渡り合うために造られたドミネーターの真の姿に・・・・。


 ジンは余計な物を取った感覚を確かめるかのように首を回し、腕や足を準備運動のように振るう。その際にも敵小隊は動く事無く固まっていた。それは彼らにも伝わっていたからだ。たとえ正確な情報など無くとも、彼等の本能が感じ取っていたのだ。


 目の前にある特機がどれほどのモノなのかを・・・・。


「行くぜ・・・・」


 ジンは小さく呟くと、目の前のリオンに左ストレートを叩き込んだ。そして瞬きする間も無いほどの速さで最も近くにいた3体のリオンを同時としか言えない速さで破壊した。


 残ったリオンはヴァルゼリオンの動きを本能的に恐れながらも果敢に向かってきた。だがそれは、正直なところ無意味な物でしかなかった。


 リオン4機はヴァルゼリオンの動きを牽制すべき離れた距離からレールガンのトリガーを引いた。だが、その指がトリガーに触れる前にヴァルゼリオンは間合いを詰めた。


「遅えっ!!」


 ジンは叫ぶとともにリオン4体にほぼ同時に蹴りを入れた。その音速すら軽く凌駕した速さにリオンのパイロットも緊急回避プログラムも反応できず、何の抵抗すらなくリオンは破壊された。


 ほぼ同時に爆発していくリオンを見てジンは歓喜の叫びをあげた。


「やった・・・・ついにできた!!俺はヴァルゼリオンを扱えたんだ!!」


 ジンは喜びのあまり一人で声を上げる。だが、それは共に搭乗しているカズエにもわからなかった。カズエは喜ぶジンにわけもわからず声をかけてきた。


「ジ・・・ジン?どういう事なの、これは?」


「どういう事って・・・何がだ?」


「決まってるじゃない!今のヴァルゼリオンよ!!なんであんな動きができたのよ!?」


「わかったからだよ」


「わかったって、なにがよ?」


「全部さ」


「全部?」


「ああ、だけど言葉には出来ない。言葉にしたら嘘臭くなる」


「嘘臭くなるって・・・・・・もっとちゃんと説明しなさいよ!」


「出来ればするさ。ただ、全部仕事が終わったらな」


 ジンはそう言いながら、後ろを向く。そこには小隊最期の機体であるガーリオンがあった。


「そうだ、カズエさんのコンピューターから俺の思考とかなんかをモニターできないのか?」


「え?それぐらいならできるけど?」


「だったら見ていた方がいい。多分面白いものが見れる」


 そう言うとジンはガーリオンとの間合いを詰めず、逆に間合いを離した。ガーリオンは距離をとってレールガンを乱射する。だが、ジンはレールガンを何の苦も無く簡単に避け続ける。


「な、何よこれ!?」


 ヴァルゼリオンの動きとジンの思考をモニタリングしていたカズエはあまりの驚きに声を上げた。


「『重力制御』と『機体運動制御』と『慣性制御』が全くタイムロス無しに行われているし・・・・それにこのグラフの動きは・・・・」


カズエは、その異常な動きをするグラフに目を奪われる。本来人間は、一度に二つの思考などできはしない。だが、ジンの思考を表すグラフは、まるで複数の人間の思考を計測しているかのような複雑な動きをしていた。カズエは一瞬機械の故障とも考えたが、他の機能に全く異常は無い。


ありとあらゆる可能性を頭の中で選別したが結局カズエの結論は一つに達した。


「まさか・・・これがPSFなの?」


 カズエは自分が達した結論を、完全に信じる事ができなかった。なぜならPSFという能力自体がカズエの想像の産物でしかない。確かに歴史においては、十人同時に会話をしていた聖徳太子のようなPSFに似たような能力もあったかもしれないが確認できる手段は無い。


 だからカズエはヴァルゼリオンを人間が扱えるものでは無いと認識していた。しかし、実際にPSFを持っている人間がいたのだ。現実に存在し、今ヴァルゼリオンを操って闘っているのだ。そう考えるとカズエは身震いを起こした。


「カズエさん。そろそろわかったか?」


「え・・・ええ」


「よし、じゃあ攻撃に移るとするか!」


 ジンはカズエの言葉を確認し、防御一辺倒の状態から一気に攻勢に出る。開いていた間合いを一気に詰め、ガーリオンのレールガンを持っている右腕を掴む。


「はっ!!」


 掛け声とともにヴァルゼリオンの左の手刀が振り下ろされ、ガーリオンの腕を両断する。


「こっちもだ!」


 間髪入れず、ガーリオンの肩に手をかけ、肩にあるソニックブレイカーの為の装置を破壊した。それによってガーリオンは完全に無力化した。


 ガーリオンはもはやヴァルゼリオンに敵わない事を悟り、咄嗟にヴァルゼリオンに背を向け逃げようとする。


だがガーリオンが逃げる前に、既にヴァルゼリオンはガーリオンの行く手を阻んでいた。


「喰らえ!」


 その時、ヴァルゼリオンの拳が音速を超えてガーリオンの頭部に突き刺さる。しかもその拳は瞬きする間に左のアッパーと右のチョッピングライトが交差して、まるで狼が牙で獲物を噛み潰したかのようにガーリオンの頭部は破壊され、海面に落下する。


「逃がすか!」


 ジンはすぐさま態勢を整え、落下するガーリオンに追いつき、海面スレスレで捕縛する。その一連の行動を見て、カズエは呆れたように呟く。


「今の技は何?アッパーしたと思ったらガーリオンが下に落ちてったけど・・・・」


「ドミニオン・システムを使って、拳にかかる慣性を消してみた」


「慣性を消したって・・・・。そこまでやるなんて・・・・」


「まあ、頑張ればもっと色々な事ができるかもな。それよりもこいつだ。色々情報聞き出さないとな」


ジンは、ガーリオンを逃がさない為に、コクピット部分を左手で握り、いつでもコクピットを潰せるようにする。


「カズエさん。敵パイロットと話がしたいんだけどどうすればいい?」


「ちょっと待って、今DCが使用していた無線の周波数にあわせるから・・・・いいわよ。これからはジンがこの回線を使って自由に話をできるわ」


「よし・・・・・ガーリオンのパイロットに告ぐ!こっちはヴァルゼリオンのパイロット、ジン・イスルギだ。コクピットを潰されたくなければこちらの指示に従ってもらう。もちろん救難信号の発信のような抵抗と見られる処置をした場合もコクピットを潰す!」


「こちらガーリオンのパイロット、スヴェンだ。了解した・・・・」


 ガーリオンのパイロットであるスヴェンは素直に抵抗を止めた。ジンは、スヴェンの声の様子から中年の男の印象を受けた。


「よし。質問させてもらうが、あんたはどこの兵士だ?DCにいなかったことだけはわかるが、イスルギの私設部隊か?」


「そうだ。会長が組織した私設部隊の隊員だ」


「なるほどな・・・。じゃあまた聞くが、イスルギがアイドネウス島へ侵攻した理由は何だ?なんでDCを壊滅させる必要があったんだ?」


「俺達は、DCを壊滅させに来たんじゃない・・・・」


「なに?」


「俺達はDCの設備と人員を接収に来たんだ」


「接収だと!?」


 ジンはスヴェンの言葉を聞いて、思わず手に力が入り、コクピット周辺を圧迫する。


「ひっ!!」


「いくらDC戦争時にイスルギがDCに協力してたからと言って、勝手に接収するだと!?ふざけた事言うんじゃねえ!!」


「ほ・・・本当だ!俺ら兵士はそう言われてるんだ!!それに嘘だったとしても俺たち下っ端に反論なんかできるはず無いだろ!」


「くっ・・・・」


 ジンは、スヴェンの必死の言葉を聞いて手の力を弱める。確かにスヴェンの言うとおり、現場の兵士には作戦に対する批判などはできないのだから。


「も・・・もういいだろ?助けてくれよ。取っておきの情報教えるからさ」


「とっておきの情報?」


「ああ。イスルギはな・・・・連邦と提携を結んだ」


「連邦と!?」


「そうだ。イスルギは連邦に、マオ・インダストリーより安価で機動兵器を支給するかわり、専属契約とともに、ヴァルゼリオンを強奪しDCを壊滅させたテロリストとして、あんたらを国際指名手配にしたんだ」


「な・・・なんだ、それ!?なんでそんなデタラメを――」


「本当みたいよ・・・・」


 今まで黙っていたカズエが話しに加わってきた。しかもその声は重く沈んでいる。


「彼の言葉を聞いてすぐにニュースサイトを開いたんだけど、そこにはっきりと書いてあったわ。私と貴方の名前がSクラスの国際指名手配反としてね・・・・」


「Sクラス!」


 ジンはカズエの言葉を聞いて絶句した。Sクラスはありとあらゆる犯罪者の中でも最悪の犯罪者の証明である。過去にこれをつけられた犯罪者など殆ど無い。なにせ、エアロゲイターのスパイだった『イングラム・ブリスケン』ぐらいしか手配されていないのだから。


 ジンの心象を推察したスヴェンは、ここぞとばかりに喋りだす。


「あんたが俺を助けてくれるなら、俺はあんたらの事を報告しねえ!そうすればあんたらも生きていけるチャンスはあるだろ!?」


 ジンはスヴェンの言葉を聞いて、ゆっくりと左手をガーリオンのコクピットから離し、スヴェンに話しかける。


「わかった。じゃあ、頼む・・・・。救難信号鳴らしていいぞ」


「ジン!?」


「すまねえ!恩にきる!!」


 カズエの驚きを無視して、ジンはスヴェンに救難信号を鳴らさせた。


「あんがとよ。あんたらの事は一生口にしねえよ!!」


「そうじゃねえよ・・・・」


 そう言ってジンは左手でガーリオンの頭の部分を掴み、掲げるように持ち上げる。スヴェンは何が起こっているのかがよくわからない。


「な・・・何すんだ?」


「助けられたら、イスルギの上層部に伝えとけ。『ジン・イスルギはヴァルゼリオンでお前達を1人残らずぶち殺す』ってな・・・・」


 その言葉と共にジンはヴァルゼリオンを高度一万mまで上昇させ、コクピット部分を胴体から抉り出し、捨てる。


「うわぁぁぁぁっ!!」


「そして・・・これがイスルギに対する反逆の狼煙だ!!」


ジンはコクピットを抉り出したガーリオンの体を地表に叩きつける。そこにはさっき倒したリオンの機体が散乱していた。


そしてそこへ超高速で投げつけられたガーリオンのボディが衝突し、大爆発を起こした。その爆発は強く、島の海面に近い木を一瞬で炎上させるほどだった。


ジンはその爆発を見ながら喋りだす。


「カズエさん・・・・・。俺は―――」


「わかってるわ。もう日本への最短ルートを算出しているわよ。今そっちに送るわね」


「ありがとう・・・。じゃあ、行くぜ、イスルギを滅ぼしに!!」


 そう言ってジンは日本目がけ、ヴァルゼリオンを飛ばす。


その胸に巨大な怒りを抱いて・・・・・・。




次回予告


 突如ジンを襲う謎の体調不良。それは、ヴァルゼリオンを操る上で不可避の事だった。その為ジンは滾る血を抑えつつ、ある事をする為にイスルギのマレーシア工場に向かう。


 同じ頃、連邦とイスルギが、ジンに対してエージェントを送り出す。片方は、ジンを倒す為、もう片方は、ジンを嘲笑う為に・・・・・・・


 次回『追跡者来襲』

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://suou00.blog57.fc2.com/tb.php/133-8c719373

 | HOME | 

プロフィール

蘇芳

Author:蘇芳
特撮とケームとマンガをこよなく愛するオタクです。

 最近の流行についていけないながらも、色々と頑張って生きてます。

 どうやら小説などのようにある程度の長文を開いた時に表示が完全にされないバグのようなものがあるらしいです。


 原因はわかりませんが、対処法としてはツールバーの履歴アイコンを2回ほど押せば直るようです。

 ただ、これはIEでの対処の仕方です。他のソフトを使っている場合は申し訳ありませんがどう対処すればいいかわかりません。

 少々不便でしょうがよろしくお願いします。

メアドです
suou00●hotmail.co.jp
●を@にしてください。

 ミクシィにもいますので、入れる人はよかったら見てください。

 もし気に入ってくれたら下のバナーをクリックしてください。
 
 

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ

[PR] 英会話 生命保険 アルバイトFC2ブログ 専門学校