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 基本的に特撮・ゲーム・自作小説が中心のブログです。  小説に関しては常識ですが無断転載は禁止です。

1st BREAK  『侵された聖域』

 今回アップしたのは以前うらのあさんのページにアップしていたものです。
 これ以上、知人のページのお世話になっているのも申し訳ないので、こちらでも掲載します。よろしかったら読んでください。
SUPER ROBOT WARS HARDCORE

OUT BRAVE

(アウト ブレイブ)


プロローグ


『終末の序章』


 新西暦188年、人類は初めて異星生命体と接触・戦闘を経験した。異星生命体は、『エアロゲイター』と呼称され、地球近辺まで惑星型要塞『ホワイトスター』を侵攻させてきた。俗に言う『L5戦役』の事である。
 その侵攻は連邦軍最強の特殊人型機動兵器(通称・特機)による特殊部隊『ハガネ・ヒリュウ改 連合部隊』の一点突破作戦によって勝利を収め、地球に仕掛けられていたエアロゲイターの自動防衛システムである『セプタギン』も破壊に成功し、地球はつかの間の平和を得た。


 だが連邦の高官達は、その平和を恒久の物とでも思ったのか、防衛に対する費用を徐々に削減し始めた。それに反感を持った一部の人員が『シャドウミラー』を名乗り、連邦に対しクーデターを企てたものの、L5戦役の最大の功労者、キョウスケ・ナンブ中尉達によって鎮圧された。
 この事件は『シャドウミラー事変』と呼ばれ、連邦の新体制が、いかに不安定な物かを露呈した。


 それを憂えた者達は、最も早く異星人の脅威を唱えた『ビアン・ゾルダーク』の理念を再び立ち上げる為、DCを再結成し独自に地球防衛の為の研究と兵力の増強に努めた。


そしてDC再設立から半年後の新西暦189年・初夏。


 DCの戦力は、順調に増加していた。だが、そんなDCの理念を嘲笑うような計画が水面下で着実に進行していた。


そして物語はDC本部から始まる・・・・・。



1st BREAK


『侵された聖域』

(おかされたせいいき)







 アイドネウス島・DC(ディヴァイン クルセイダーズ)本部。既に明白となっていた異星生命体・エアロゲイターからの侵略に対して作られた私設防衛基地で、いかなる侵略に対しても随時対応できるように、そこにいるスタッフ全員が絶えず地球圏に飛来する物体に対して目を光らせていた。


 だが・・・・・・




 PM21:00、DC本部内は怒号と悲鳴と銃声によって埋め尽くされていた。


「こっちだ!早くしろ!!」


 DC戦闘部隊を率いるナオト・ミスギ(三杉 直人)が目の前の見知らぬ兵隊に機関銃を撃ちながら叫んだ。それに続いて、DC戦闘部隊隊員のジン・イスルギ(石動 刃)は、機動兵器開発者であり、ナオトの婚約者でもあるカズエ・ライドウ(磊堂 和江)の手を引きながら本部内の通路を格納庫に向かって走る。


 ナオトは二人をかばいながら追ってくる敵兵を確実に撃ち殺し、脱出路を作っていった。だが、敵兵の数は減る事無く、むしろ少しずつ増援が集結していた。


「くそっ!!」


 ナオトは機関銃一丁では対抗しきれないと悟り、牽制をしながらジン達と共に一時的に身を隠す為、向かっていた格納庫とは反対方向に走り出した。


「ナオト隊長、どうするんだ?」


 ジンは、疲弊の色の濃くなってきたナオトに声をかける。


「どうしようも無い。とりあえず殺されないようにするしかないな・・・・」


ナオトは、呟いたあと、悔しそうに歯噛みをした。それを見てカズエは呟いた。


「一体、なんでこんな事に・・・・」


 それはジンもナオトも同じだった。一時間前には、まさかDCが『地球人』の手によって壊滅される等と思ってもいなかったのだから。


 ジンは思い返していた。一体自分達が何をしたというのだ?自分達DCは、怠惰な連邦の代わりにエアロゲイターに対して防衛網を張り、地球の為に働いていたはずだ。それなのに他の人間は感謝の言葉一つすら言わず、むしろDC再結成に対して、マスコミから『銃後の平和を破る者』として批判の声しか聞こえてこなかった。


 それどころか、今DCは、守ろうとした地球人の手によって壊滅されたのだ。その理不尽すぎる仕打ちにジンは体を振るわせるほどの怒りを感じていた。


「ジン!前を見ろ!!」


「え!?」


 ナオトの声を聞いてジンが我に帰り、顔を上げると、目の前に機関銃を構えた兵士が一人いた。兵士はジンを見て馬鹿にした笑みを浮かべた。


 だが・・・・・・


「うらぁっ!!」


 ジンは相手が笑った瞬間、相手の腕に右足を蹴りいれた。その蹴りによって兵士の腕の骨は折れ、機関銃を地面に落とした。


だが、それでもジンは止まらなかった。右足を振るった遠心力を利用して、左足を飛び上がりながら兵士の顔面に叩きつけた。


兵士の首から鈍い音が響き、そのまま地面に倒れ、微動だにする事はなかった。それを見ていたナオトとカズエは驚嘆する。


「おお!さすが、現・DC最強の喧嘩師だな」


「凄いわね。話には聞いていたけど、実際見ると衝撃的ね」


「そんな事いいから、早く逃げ――」


 そう言いながらも、ジンはある物に目をつけた。ジンは咄嗟に倒した兵士の体を掴み、体の前に持ち上げた。


「隊長達は隠れていてくれ!!」


そう言いながらジンは倒した兵士の体を盾代わりにして、追って来た兵隊目がけて走り出した。


 兵隊は、盾になっている兵士の事を無視するかのように、ジンに向かって機関銃を発砲してきた。だが機関銃の弾丸は貫通力が低い為、兵士の体に食い込んでも、ジンの体には当らなかった。


「喰らえ!!」


 ジンは、兵隊の懐まで近づき、持っていた兵士の体を投げつけた。兵隊は、既に亡骸になっている兵士の体を叩きつけられ、隊形を崩し、銃を落とした。ジンはその隙を狙って兵隊に殴りかかった。


 まず、一番近くにいた兵士の顔面に拳を入れ、続けざまにその場にいた兵士の腕や足を蹴りや拳で破壊する。兵隊達は痛みに耐え切れず、地面に倒れこんだ。そこを狙ってジンは、兵隊達の後頭部や喉に躊躇う事無く全力で蹴りを入れた。それによって通路を埋めていた十数人の兵隊は全員息絶えた。


「道を開いた!早く行こうぜ!!」


 ジンはナオト達に声をかけ、再び格納庫めがけ走り出した。


「さすがだな、ジン。あそこまで手際がいいと驚く暇も無いな」


「まあ、あれくらいは当たり前だけど」


 ジンは余裕たっぷりに軽口を叩く。だが、こんな事はジンにとっては、本当に大した事では無い。


 ジンは日本最大の軍需産業『イスルギ重工』の会長であるレンジ・イスルギの嫡子である。その為、幼い頃から相応の教育と、父親に対する、周りの大人の僻みや妬みをその体に受けて育ってきた。


正直、ジン自身もレンジに対して好印象を持ってはいない。レンジのあまりにも強いエコイズムを憎悪してさえいる。だが、それでも?閾サ分の身に降りかかる火の粉だけは払わなければならない。ジンは父親に頼るのを拒否し、自分自身だけで心も体も強くしていった。それが功を奏したのか、今では己が肉体を使っての戦闘でDC内で並ぶ者がいないほどの強さを持つまでになっていた。


だが、そんな力もアイドネウス島を覆うほどの包囲網を敷かれては、何の意味も無いのである。いくら格闘戦が強いと言っても、狭い通路で何丁もの機関銃を避けきれるはずも無ければ、弾丸に耐えられる筈も無い。


ジンはそんな自分に対して無力感を感じながらも、ナオトに対しておくびに出す事は無かった。








「よし、このまま格納庫に一直線だ!!」


 ナオトはジンが開いた通路にもはや敵兵がいない事を確認し、カズエの手を自分で引きながら走り出した。


ジンはその二人の姿を見て、不憫でならなかった。本来なら二人とも明後日に控えた結婚式に向け、様々な準備をしている時間のはずだった。ジンもこの二人にはDC入隊時から世話になっている為、親交もかなり深く、結婚式の準備も自ら進んで手伝っていた。だから二人がどれだけ明後日を待ちわびていたのかが痛いほどわかっていた。この二人だけは絶対に助ける・・・・・。ジンは心の中で強く思った。


そして、ジン達はようやく格納庫の中に入った。格納庫の中は、思ったよりも占拠されてはおらず、ジンとナオト二人だけで格納庫にいた兵隊数人を始末することができた。


ナオトは周りを警戒しながらジンに言う。


「ジン!お前はカズエと一緒にガーリオンに搭乗していろ!」


「え?ナオト隊長は?」


「俺か?俺はちょっと持っていかなきゃいけない大切な忘れ物があるからな」


 ナオトの言った忘れ物という言葉にカズエが反応した。


「忘れ物って・・・・もしかして・・・・」


「ああ、カズエが作った『あの機体』を持っていかないとな」


「何言ってるのよ!そんな事している間にあいつらが来たらどうするの?」


「そうだぜ隊長。余計な事してる間に失敗したらたまんねえよ」


「大丈夫だって。あそこにある特別格納庫のドアを登録していた俺のカードで開けてくればいいんだからさ。それにカズエが指揮を執って、俺が乗る事になっていた『プロジェクトDD』の機体をみすみす置いて行く訳にはいかないだろう?」


「ナオト・・・・」


「そんな心配するなよ。すぐ取って来るからさ」


 そう言うとナオトはジンとカズエの心配をよそに、笑顔で少し離れている特別格納庫へ走っていった。


 その時、ジンは自分の目がおかしくなったのかと疑った。ナオトが特別格納庫用のコンソールパネルにカードキーを入れようとした時、突然 ナオトの体に機関銃の一斉掃射が行われた。


 ナオトの体は、銃弾の衝撃で踊っているように体を揺らし、そして地面に崩れ落ちた。その倒れかたは完全に事切れた者の倒れ方だった。


「ナオト!!」


 ジンの脇にいたカズエの悲鳴が響いた。そして、それが合図になったようなタイミングで物陰から6人の敵兵が現れ、ジンとカズエに向かって機関銃の銃口を突きつけた。そしてその中心にいる日系の男がジン達に命令する。


「手を頭の後ろにつけて、地面に伏せろ。もし指示に従わない場合は始末する」


 男の口調は淡々としていた。だがそれが、男が何の躊躇いも無く自分達を殺すであろう事がジンに伝わってきた。


「くそ・・・」


 ジンは苦々しく思いながらも、男の言うとおりにした。あの人数の機関銃なら自分1人なら対処できる。だが、今ここにはナオトの最愛の人間であるカズエがいる。もし自分が助かっても彼女が助からなかったら意味が無い。そう考えたジンは降服せざるをえなかったのである。


だが、そこでジンの予想していなかった事が起こった。隣にいたカズエが、男の指示に従う事無く、ただ呆然と立ち尽くし、倒れているナオトをただ見ていた。


「カズエさん、どうしたんだ!?手を上げて降服の意思を見せないと殺されるぞ!!」


「いいのよ・・・・死んだって・・・」


 カズエは心ここにあらずといった様子で呟く。


「あいつが・・・・ナオトが死んだんじゃ、どこに逃げたって・・・・」


「そんな・・・・・・」


 ジンは愕然とした表情でカズエを見る。もはや全てに対して絶望しきったような表情だ。そして、そんな事を気にも止めず、男は冷酷に呟く。


「どうやら降服の意思は無いようだな。仕方が無いから両方とも死んでもらおう。どうせこの男の持つ鍵さえあれば、この中にある『支配者』はどうにでもなるからな。会長には悪いと思うが・・・・」 


「会長?」


「やれ・・・」


 ジンは男の呟いた『会長』という言葉に反応するが、男はジンの言葉に微塵も答える気が無く、周りにいる兵隊に向かって発砲を許可した。


 だが・・・・


「待ってくれ!!」


 突然響いた声に、その場にいた全ての者が驚愕した。声を出したのは誰もが死んだと思っていたナオトだった。ナオトは体中の弾痕から血を流しながらも、男にすがりつきながら懇願した。


「頼む・・・・・・。俺はどうなってもいいからジンとカズエを・・・・あの二人を助けてくれ!!」


 ナオトは、ジンとカズエを助ける為、必死に男に懇願する。だが・・・・


「ふざけるな・・・・」


 男は懐に入れていた拳銃を取り出し、ナオトの体に数発の弾丸を撃ち込んだ。弾丸はナオトの心臓や肺のある部分を貫通し、ナオトは口からかなりの量の吐血をする。だが男の手は止まらず、トドメとでもいうつもりなのか、銃口をナオトの額に押し付けた。


「まず、死ね」


 男の言葉と共に拳銃の引き金が引かれた。発射された弾丸はナオトの頭部を貫通した。それと同時にナオトの目は白目をむき、再び地面に崩れ落ちた。その光景にカズエはただ絶叫した。そして男は完全に死んでしまったナオトの頭を踏みにじりながら、汚い物でも見たような険しい顔つきになる。


「なにが『俺はどうなってもいいから・・・・』だ。俺の嫌いな安っぽいヒロイズムをふり巻いて・・・。これだからDCにいる者はムカツクんだ!!」


 男はナオトに対する侮辱の言葉を吐き捨てるように叫んだ。それを耳にした時、ジンの心に何かが湧き上ってきた。


 怒り・・・・憎悪・・・・そう言った遠まわしな物ではなく、ただ純粋に彼らに対して殺意が溶岩の如く湧き上ってきた。


「ウァァァァァァッッッッッ!!」


 ジンは咆哮と共にナオトを取り囲む敵兵に飛びかかった。さっきまで頭の中にあった『カズエの身の安全』や『生き残る手段』や、それどころか『アイドネウス島からの脱出』すらもジンの頭から消えていた。ジンはただ、マグマが爆発したかのように噴出する殺意に身を任せ、体を動かした。


「止ま――」


 敵兵はジンに対して銃口を向けて威嚇してきた。だが、ジンは敵兵の言葉よりも速く、拳を撃った。


ジンの拳は敵兵の顔面にめり込み、完全に脳を破壊した。拳を引き抜くと同時にジンは近くの兵の頭に回し蹴りを叩き込み、首の骨を折った。


「クッ!!」


 残った兵はジンの動きに恐怖を見せながらも機関銃をジンに向けてきた。だが、それも無駄に終わった。ジンは機関銃を向けられる前に敵兵達の後ろに回り込んでいた。


「遅せえんだよ!!」


 ジンは兵達の背骨に強烈な蹴りを入れ、神経ごと背骨を叩き折った。


「次はてめえだ!!」


 敵兵全てを殺したジンは、ナオトを殺した男めがけ突っ込んでいく。


「無駄だ」


 男は、高速で向かってくるジンの眉間めがけ照準をつけてきた。だが、それでもジンはその銃口を避けようともせず、ただ真っ直ぐに男に向かう。 そして、ついに銃口とジンの距離が1mを切った時、男は銃の引き金を引いた。


「ガァッ!!」


 銃口から発砲音とほぼ同時に悲鳴が響いた。だがその声はジンの声ではなく、銃を持っていた男のほうだった。しかも男は、いつのまにかジンに襟首を掴まれているうえ、銃を持っていた腕をへし折られていた。


「アアアアアアァァァァァッ!!」


 ジンは、左腕で襟首を掴んだまま、右腕で男に殴った。ジンの拳は男の左目に当たり、掴んだままの男の襟首が破け、男は1mほど吹き飛んだ。そしてジンの拳からは、骨が砕ける感触が伝わってきた。


「グォッ!!」


 男は、地面に叩きつけられ、まだ無事な左腕で潰れた顔を抑えながら悶絶していた。あの時、ジンは銃弾が放たれる寸前、左腕で銃を持っている腕を上にはねあげていた。そしてそのまま左腕を相手の右腕に巻きつけて襟首を掴み、自分の首で相手の腕を押さえつけて男の右腕をへし折ったのだ。


 ジンは手に持っていた男の襟首に目を向けると、それには何かのバッジのような物がついていた。


 それを見たジンは愕然とした後、怒りと嘆きがこみ上げてきた。そのバッジの存在自体が自分の嫌な予感が正しかったと証明していたからだった。


だが、それよりも今は真っ先にやらなければいけないことがあった。


(トドメを・・・・)


 ジンは、まだ生きている男にトドメを刺そうとして、まだ倒れている男に近寄る。だがその時、ジンの耳に微かに靴音らしき物が聞こえてきた。つまり、それは敵の増援が来るという証だった。


「・・・・・・・・くそっ!!」


 ジンは苦しんでいる男に背を向けると、ナオトの遺体からカードキーを取り出し、コンソールパネルに向かった。


「カズエさん!早くこっちだ!!」


「え?」


 ナオトを殺され呆然としていたカズエは、ジンの言葉で我に帰り、目の前にある兵の遺体に驚愕した。


「こ・・・これは?」


「そんな事どうでもいいから早くこっちに!!」


「何するつもりなの?」


「決まってる・・・・。隊長の言っていた『忘れ物』を使ってこの基地を脱出する」


「で、でも・・・」


「いいから早くしろ!!」


「!?」


 突然のジンの言葉にカズエは途惑う。


「ナオト隊長は・・・・・ナオトは俺とあんたを助けたくて死んだんだよ!!あんたはそんなナオトの死を無駄死ににしたいのか!?」


「・・・・・・・」


 カズエはジンの言葉を聞いて、一度ナオトの遺体に目を向けた後、目を閉じた。そして涙を拭い、深く深呼吸をしてから特別格納庫目指して走り出した。


 ジンはそれを確認した後、コンソールパネルのカードリーダーにナオトのカードを通し、扉のロックを開けた。


「よし!」


 ジンは追っ手が来る前に逃げるべく、近くまで来ていたカズエの手を引っ張って扉の中に駆け込んだ。


 






薄暗い格納庫の中には特機が一体だけ置かれていた。その特機は珍しく人間の体型をリアルに再現していた。だが、それゆえに肩と腕に装備している固定武装がミスマッチだった。


「これが・・・・」


「そう。DC戦争でも使用を禁じられた『ドミニオン・システム』を搭載し、ビアン総帥の言う異星人・エアロゲイターに対しての切り札となる計画『プロジェクトDD』の中核を成す『ドミネーター』と呼ばれる種類の機体のファースト・ロールアウト。その名を『ヴァルゼリオン』よ!」


「ヴァルゼリオン・・・・」


「もっともエアロゲイターは、ハガネとヒリュウ改の連合部隊が退けたから、計画自体が保留になってこんな所に置かれてるんだけどね」


 ジンは走りながらも、ナオトが乗るはずだったヴァルゼリオンの姿を見上げた。その姿はビアンが計画した機体というだけあって、あの究極の特機と言われたヴァルシオンに近い形状をしていた。


違うのは装甲の形状がヴァルシオンと違って直線的なのとミスマッチな武装が付いていることぐらいだった。


「カズエさん!!それでヴァルゼリオンには二人乗れる分のスペースはあるのか?」


「大丈夫よ。ヴァルゼリオンには遭難時でも3人ぐらいなら一ヶ月は暮らせるほどの緊急用カーゴ・スペースがあるわ」


「そうか・・・」


「一応言っとくけど、私には操縦は出来ないわ。だから・・・・」


「わかってる。俺がなんとかする」


「頼むわよ・・・・」


 そう言ってカズエは機体の背面にあるカーゴ・スペースの入り口に向かった。ジンはヴァルゼリオンの腹部にあるコクピットに入る。


「いたぞ!!」


「来たか!!」


 ジンがコクピットに入るのとほぼ同時に、敵兵が格納庫になだれ込んできた。ジンは、すぐに手でハッチを閉め、コクピットシートについた。だが・・・


「な・・・何だ?」


 ジンは操縦しようとして愕然とした。この機体のコクピットには通常のAM(アーマードモジュール)やPT(パーソナルトルーパー)に使われているレバーやスイッチ、それどころかメインモニターなどの機器すら存在しなかった。あるのは小さめのモニターと大きめに作られたシートと、シートの左右の肘かけ部分についているカバーがかかったボタンが二つだけだった。


「ど・・・・どうやって動かすんだ」


 ジンは、見慣れぬ操作系に困惑する。いくら最近の機体の操作系統が簡略化されているとはいえ、ここまでの物は無かったからだ。


「ジン!どうしたの?」


 カズエの声がスピーカーから聞こえてきた。どうやらカーゴ・スペースと会話ができるようだ。


「カズエさん!これ一体どんな操作系統なんだ?いくらなんでもこんなのは見た事が無いぞ!?」


「大丈夫よ!!ヴァルゼリオンは、操縦者の思考を汲み取って動くB.D.L(ブレイン・ダイレクト・リンクシステム)を改良した操縦系統になっているわ!!右のボタンを押して、一度搭乗すれば、貴方の思うままに機体を動かす事ができるはずよ!!」


「でも、俺はまだB.D.Lは扱った事が――」


 その時、機体の外から足音が少しずつ近づいてきていた。このまま、動かせなければ確実に外に引きずり出され殺されてしまうのは明白である。


「こうなったらヤケだ!!やってやる!!」


 ジンはシートの右の肘かけについているボタンを押し込んだ。その瞬間、シートごとジンの体、全てをカプセルのような物が包み込んだ。


それによって視界は完全に防がれたうえ、ジンの体は少しも身動きが取れなくなった。するとジンは突然自分の頭が締め付けられるような感覚に襲われた。


「ウウッ!!」


 突然の事態にジンは強烈な吐き気に襲われる。だが必死にこらえ、気を失わぬよう意識を強く持った。


すると、再び突然に目の前の視界が開けた。目の前に見えるのは、さっきまでの暗いコクピットではなく、いつのまにか明るくなっていた格納庫の内壁だった。


ジンは咄嗟に自分の体を確認する。だが、もはや動いているのは自分の体ではなかった。今ジンが動かしている体は、ジン自身の体が中に入っているヴァルゼリオンの体だった。


「ジン!聞こえる!?」


 頭の中からカズエの声が聞こえる。その妙な感覚にジンは戸惑う。


「ああ、聞こえる。何か、妙な気分だ。B.D.Lってこんなものなのか?」


「いえ、これはB.D.Lと違うわ。あっちと違ってパイロットの視界をヴァルゼリオンの視界に合わせているから、もっと戦いやすいはずよ。それより、何か体に違和感や痛みみたいな物はある?」


「無い。むしろ指先まで神経が行き届いていて良い感じだ」


「それなら良かったわ。だったらとりあえずここから脱出しましょう!細かい事は後から説明するわ!」


「わかった!!いくぞ!!」


 ジンは、指先を動かした後、まず自分の周りについている搭乗用の足場を破壊した。その為に自分を追ってきていた兵隊達が数十mの高さから落ちていったが無視する事にした。


 そしてジンは目の前にある格納庫の壁に蹴りを入れた。壁は、三発ほど入れてようやく崩れた。


 崩した壁から抜け出たジンは、そのまま格納庫を破壊して外へ出た。外には兵隊や幾つもの機動兵器があった。まだ誰も乗り込んでいる訳では無いが、足元の人間を見れば、すぐにでも機体に乗り込み、ヴァルゼリオンを破壊しに来る事は明白だった。


「どうするカズエさん?外に出たはいいがこれからどうするんだ?」


「とりあえず逃げるのよ。いくらなんでも固定武装の『アーム・レールガン』と『ツイン・レールキャノン』じゃ、全軍を相手にするのは無理だわ」


「だったらどうやって逃げるんだ?」


「とりあえず飛んでみて。ヴァルゼリオンにはテスラ・ドライヴと同じで反重力を利用して飛行が可能よ!」


「どうやれば飛べる?」


「さっきと同じよ。頭の中で浮かぶように命令するの」


「よし・・・」


ジンは、一度深呼吸をしたあと、飛行する事を念じた。すると、自分の体が急激に浮き上がった。その浮上速度は大気圏脱出速度に達するような速さだった。


「うわぁっ!!」


「ジン!上昇を止めて!!このままだと大気圏を脱出するわよ!!」


「くっ!!」


ジンは必死に上昇の停止を念じた。するとヴァルゼリオンはスピードを緩める事無く、いきなり空中に停止した。


「なんだよ、これ?一体何がどうなって・・・・・・」


「原因は、ジン。貴方よ」


「俺が?」


「そう。貴方が『高速での上昇』を思い浮かべたからなの。それに対してヴァルゼリオンは機体にかかる慣性をカットして、斥力によって機体周辺を真空にして、大気圏脱出速度にまで加速したの」


「慣性をカット?機体周辺を真空化?ヴァルゼリオンにはそんな事が可能なのか?」


「可能よ。それを実現させるのがプロジェクトDDの要として開発された、ヴァルゼリオンの命とも言える『慣性・重力完全支配システム・ドミニオン・システム』なのよ」


「ドミニオン・・・・。支配者か・・・・」


ジンは思わず呟いた。今までAMには何度も搭乗した事がある。だがヴァルゼリオンは今まで乗った機体と全く違っていた。


これまで搭乗していたAMは、例えヴァルシオンのような一軍を相手にできるような機体であっても、兵器という点を逸脱していた事は無かった。


だが、このヴァルゼリオンは違う。今までの技術で制御可能な重力だけでなく、慣性と引斥力を制御どころか支配と言っても差し支えないほどのレベルで操る事のできるのだ。まさに支配者というのに相応しいその力はジンに畏怖を覚えさせるのに十分だった。


ジンがヴァルゼリオンの力に呆然としていると、それを察したのかカズエが喋りだす。


「とりあえずあいつらから逃げられたのが不幸中の幸いね。このまま本部から離れましょう」


「離れるって・・・・あいつらは?」


「言ったでしょ?今ヴァルゼリオンについている武装じゃあいつらを相手にできないわ。それにヴァルゼリオンには、まだ絶対に解決できない欠点があるの・・・・」


「欠点?」


「そう。絶対に解決できない欠点・・・・・。それよりも早く行きましょう。下の方から機体が数機飛んで来てるわよ」


「・・・・・・・クソッ!!」


 ジンは逃げなくてはならない怒りと情けなさに苛まされながら、DC本部から飛び去っていった。




 時は新西暦189年 地球は再び戦渦に巻き込まれる事になる。


それは地球全てを巻き込みながらも、己が『信念』と『正義』を貫き通す男の、永い戦いの幕開けだった。


次回予告
 友を殺されながらも一矢を報いる事すらできずアイドネウス島から逃げ出したジン。
しかし、イスルギの追手は手を休める事無くジンを追撃する。
 苦戦する最中、ジンは己が身に眠る力に接触する・・・・
 次回『反逆の狼煙』

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蘇芳

Author:蘇芳
特撮とケームとマンガをこよなく愛するオタクです。

 最近の流行についていけないながらも、色々と頑張って生きてます。

 どうやら小説などのようにある程度の長文を開いた時に表示が完全にされないバグのようなものがあるらしいです。


 原因はわかりませんが、対処法としてはツールバーの履歴アイコンを2回ほど押せば直るようです。

 ただ、これはIEでの対処の仕方です。他のソフトを使っている場合は申し訳ありませんがどう対処すればいいかわかりません。

 少々不便でしょうがよろしくお願いします。

メアドです
suou00●hotmail.co.jp
●を@にしてください。

 ミクシィにもいますので、入れる人はよかったら見てください。

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